研究課題
Fli1+/-マウスから血管内皮細胞、骨髄系細胞、B細胞、制御性T細胞、gamma delta T細胞、脂肪細胞を単離し、それぞれの細胞において全身性強皮症の病態の鍵となる分子の発現量を定量的real time PCRを用いて検討した。また、並行してLoxP-Creシステムを用いて、各種細胞特異的Fli1欠失マウスの作製を進めた。今年度は血管内皮細胞とB細胞において、詳細なデータが得られた。血管内皮細胞については、血管内皮細胞間の接着を制御するVE-cadherinとPECAM-1の発現低下、血管内皮細胞と血管周皮細胞の接着を制御するPDGF-BとS1P1の発現低下、血管基底膜の分解を制御するMMP-9の発現亢進、の3つの異常があることが明らかとなった。さらに血管内皮細胞の動態については、細胞遊走と細胞増殖の亢進、細胞管腔形成能(tubulogenesis)の低下が顕著に誘導されることが明らかとなった。また、新生血管と他の血管の吻合を制御するNotch1とdelta-like 4については、いずれも発現が顕著に低下することが明らかとなった。このことから、Fli1の発現が低下している血管内皮細胞では、細胞接着能と細胞凝集能の低下、細胞遊走能と細胞増殖能の亢進、血管吻合能の低下が誘導されることが明らかとなった。これらの異常は全身性強皮症で特徴的に認められる毛細血管拡張、細動脈狭窄、血管脆弱性に深く関与していると考えられる。一方、Fli1の発現が低下したB細胞では、活性化抑制因子であるCD22の発現低下、活性化因子であるBAFFに対する受容体の発現亢進があり、刺激に対してIL-6を過剰産生することが明らかとなった。全身性強皮症の病態においてIL-6の重要性が指摘されており、その産生源としてB細胞が重要であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度はFli1の発現低下が各種細胞に及ぼす影響を網羅的に解析することが目標であった。各種細胞における機能解析を並行して進めているが、特に血管内皮細胞とB細胞の解析において、多くのデータが得られた。骨髄系細胞、制御性T細胞、gamma delta T細胞、脂肪細胞についても予備データは得られており、今後再現性を確認する予定である。計画は概ね予定通り進んでいる。
骨髄系細胞、制御性T細胞、gamma delta T細胞、脂肪細胞については、予備実験で得られているデータの再現性の確認を進める。血管内皮細胞とB細胞については、それぞれの細胞特異的Fli1欠失マウスを作製し、全身性強皮症の主要3病態(線維化、血管障害、免疫異常)がどの程度再現されるか、検討を進める。
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Experimental Dermatology
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10.1111/exd.13341.