研究課題/領域番号 |
16H05367
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
國貞 隆弘 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30205108)
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研究分担者 |
原 明 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10242728)
青木 仁美 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10550361)
本橋 力 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40334932)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 色素細胞幹細胞 / 毛包ケラチノサイト幹細胞 / 幹細胞ニッシェ / X線 |
研究実績の概要 |
我々は放射線照射によるマウの白毛化は表皮ケラチノサイトが提供する色素細胞幹細胞 (MSC)のニッシェ機能の低下によることを発見したことから、X線照射後のケラチノサイトで発現が低下する遺伝子をDNAアレーとプロテオーム解析を行なって探索し,MSCニッシェ因子の候補遺伝子としてリストアップした。20の候補から、qRT-PCRによる実際のX線照射前後のマウスの表皮での発現の変動の程度、それぞれの候補遺伝子のこれまでに明らかにされている機能、pathway解析による相互関係の確認などにより、3種ほどをまず絞り込んだ。 その中の一つHMGB2に関して、遺伝子編集CRISPR/Cas9システムを利用して受精卵からノックアウトマウスの樹立を試みた。9種類の独立したノックアウトの系統を確認し、確実に機能ドメインに変異が生じている2系統を選んだ。これらのマウスは、ホモ遺伝子ノックアウト個体で精子形成能が著しく低下していることから、白毛化を調査するために必要な十分なホモノックアウト個体を得にくかったが、飼育条件の改良等によりある程度の量産に成功した。 これらのHMGB2ノックアウトホモ個体は、野生型と比較して加齢による自然な白毛の増加は観察されなかったが、放射線照射による白毛化は野生型に比べて促進されることが観察された。HMGB2はDNA傷害を修復する作用が報告されており、放射線によるニッシェ機能の喪失にはDNA傷害を適切に修復できないことが関与しているかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
色素細胞幹細胞のニッシェ因子を同定するため、当初の実験計画に従って研究を進めてきた。最初に絞り込んだ候補遺伝子HMGB2は、ホモ遺伝子ノックアウト個体で精子形成能が著しく低下していることから、白毛化を調査するために必要な十分なホモノックアウト個体を得にくかったため、表現系の評価に手間取ったが、飼育条件の改良で量産に成功した。 HMGB2ノックアウトホモマウスは、野生型と比較して加齢による自然な白毛の増加は観察されなかったが、放射線照射による白毛化は野生型に比べて促進されることが観察され、当初計画していたケラチノサイトに発現するニッシェ因子の定義に当てはまり、概ね目的が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
同様の方法で残りの遺伝子に関しても遺伝子編集CRISPR/Cas9システムを利用して受精卵からノックアウトマウスの樹立を試みる。HMGB2の類似遺伝子であるHMGB1は非ヒストン核内DNA結合タンパクとして,NF-κBやステロイドホルモン受容体など様々な転写因子の活性を調節している他、オートファジーに陥った細胞や特定の刺激を受けた細胞から放出され、周囲の細胞に警報として作用し(アラーミン)、炎症や様々な反応に関与していることがわかっている。とりわけ興味深いのは組織の再生・修復を誘導することである。HMGB2に関しては研究がほとんどなく、今回の発見を契機にして、組織の再生・修復と関連が深い幹細胞のニッシェ因子としての新機能を提唱したい。
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