研究課題
胎生動物である哺乳類では、母体環境が胎児の発生に大きな影響を与える。妊娠期には、母体の複数の臓器において、組織幹細胞の増殖・分化が増進することが知られているが、その制御機構や妊娠の継続ならびに胎児発生との関連については不明である。我々は、これまでに、胎児の成長とともに伸展する母体マウスの腹側皮膚において、表皮幹細胞の増殖・分化が昂進し、特徴的な細胞分裂様式が誘導される現象を発見した。当該年度は、妊娠期における皮膚幹細胞の増殖・分化制御の生理機能と、真皮細胞の役割について解析し、以下の結果を得た。１）タモキシフェン塗布により妊娠期の腹部皮膚の基底細胞でTbx3 をcKOしたところ、基底細胞の増殖が顕著に低下し、その結果、皮膚が伸展せずに高い張力がかかることが分かった。また、胎児の体重が低下する傾向が認められた。このことから、母体腹部の表皮幹細胞の増殖・分化制御機構は、母体の皮膚伸展と胎児の成長に重要であることが示された。２）妊娠期の母体腹側皮膚の真皮では、alpha-SMA/vimentin陽性の細胞が増加した。真皮を単離しDNAマイクロアレイ解析を行った結果、alpha-SMA/vimentin陽性細胞がSFRP1とIGFBP2の発現していることを見出した。SFRP1 KOマウスでは、妊娠マウスにおける表皮基底層の増殖とTbx3陽性細胞の出現が低下した。一方、非妊娠マウスにSFRP1とIGFBP2を皮内注射すると、表皮基底細胞の増殖とTbx3の発現が上昇した。このことから、真皮alpha-SMA/vimentin陽性が分泌するSFRP1とIGFBP2が表皮幹細胞の増殖と分化を制御することが分かった。さらに、Tbx3 cKOマウスを用いてRNAseq解析を行い、Tbx3のターゲット遺伝子の候補を得た。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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