研究課題
我々はPET画像解析により自閉症者脳内においてSERTの細胞膜移行の異常があると考え、SERT結合分子の網羅的解析に着手し、SERT膜輸送分子としてN-ethylmaleimide-sensitive fusion protein(NSF)を同定した。本研究では「シナプスを構成する分子の細胞内輸送の障害が自閉症の病態の核心である」と仮説を立て、特異的NSFコンディショナルノックアウトマウスの作製・解析を行い、SERTの脳内分布異常の有無と、自閉症様行動の有無を網羅的に解析して、仮説の正否を検証した。これまでNSFヘテロKOマウスおよびNSF発現を種々の特異的条件で抑制したマウスNSF-cKO-SNSとNSF-cKO-NGSを作製・維持して実験に供した結果、NSFヘテロKOマウスを用いた総SERT発現および脳内の局在変化、行動実験はほぼすべて完了し、SERTの脳内局在変化・社会行動・超音波発声試験のいずれにおいても自閉症様所見を確認できた。最終年度には、NSFヘテロKOマウスの電気生理学的特性を検討して、海馬CA1領域でE/Iバランスの乱れを示唆するLTD振幅の有意な減衰が確認できた。さらにこのマウスでは、電顕によりAMPA型グルタミン酸受容体の海馬での分布低下も確認できたため、NSFヘテロKOマウスは自閉症の新たなモデルになり得ると結論し、2019年度からはシナプス構成分子の細胞内輸送障害が、自閉症の治療標的になるかどうかを検討するレスキュー実験を行う研究を進めることを決め、基盤研究Bを再度申請した。一方で、NSF-cKO-SNSとNSF-cKO-NGSについてはホモ接合体が思うように殖えないことが判明し、2019年度以降にヘテロ接合体での検討を進めることを決定した。また、分担研究者によるNSF-SERTの介在分子の探索実験は、有意な候補分子を見つけられないまま終了した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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