研究課題/領域番号 |
16H05377
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
牧之段 学 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00510182)
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研究分担者 |
紀本 創兵 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (00405391)
芳野 浩樹 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (10347560)
太田 豊作 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (10553646)
安野 史彦 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医長 (60373388)
松田 康裕 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70445063)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 前頭前野 / ミエリン / 認知リハビリテーション |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、高機能自閉スペクトラム症(HF-ASD)患者の前頭前野の構造、機能について多面的に評価した。DTI解析により、HF-ASD患者では健常者に比べ、前頭前野に関連するトラクトである、鉤状束、帯状束、前視床放線のFA値が低下しており、同部位の軸索もしくはミエリンの異常が示された。これらとPTSD症状(IES-R)との有意な相関はなく、一方、PTSD症状と前頭前野灰白質容積とで負の相関が認められたことから(投稿中)、白質より灰白質がよりPTSD病態の関与することが示唆された(投稿中)。同様に小児期体験と鉤状束、帯状束、前視床放線のFA値との相関を調べたが、負の相関を認めた。この結果から、自閉スペクトラム症患者の小児期体験が劣悪であるほど、白質障害が重度となることが明らかになり、我々がマウスモデルで明らかにした幼少期社会的経験依存性のミエリン形成が自閉スペクトラム患者でも生じている可能性がある。 前年度に続き、HF-ASD患者への認知リハビリテーションによる介入効果を検討するため、HF-ASD患者および健常者の症例を追加した。さらに、認知リハビリテーション介入に加え、HF-ASD患者への運動介入効果の研究も開始した。 HF-ASD患者のマクロファージ(M1,M2)のインターロイキン1β,インターロイキン6,TNF-αやBDNFなどの神経栄養因子の発現量を測定したが、健常者に比べ、M1マクロファージにおけるTNFαの発現量が著明に増加していた。 マウス研究では、社会的ヒエラルキーと意欲(ICRマウスへのアプローチ)との関係を明らかにし、また、社会的ランクが低いマウスの前頭前野ではTNFα発現が亢進することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前頭前野機能解析および認知リハビリテーション効果検証に関しては予定していた以上のペースで進められている。マウス研究に関しては、解析手法の検証などに時間を費やしてしまい、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、HF-ASD患者と健常者の前頭前野機能解析、および認知リハビリテーション効果の検証のためのデータを蓄積していく。マウス研究に関しては、前頭前野やマクロファージのTNFα発現量が、前頭前野機能や恐怖記憶消去、社会性とどう相関するのか、運動がそれらの指標にどのような影響を与えるのかなどについて検討していく。
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