研究課題
精神疾患発症機序の解明において、異種性回避を念頭にしたバイオマーカー同定とその分子基盤に基づいた病因、病態の理解が早期診断、治療、予防法の創出のために必要不可欠である。CSマーカーであるPEN、VB6が重篤な陰性症状の一つである思考の解体、思考障害と強い関連を示すことが明らかとなった。また、躁うつ病と統合失調症という2大内因性精神疾患において、その一部にはCS病態基盤の共通性が示唆された。さらに、統合失調症において、PEN蓄積が再燃・再発リスクや予後予測の因子となる可能性も示唆された。AGEsマーカーを非侵襲的に皮膚から簡便に測定する体制を確立し、統合失調症では健常者と比較して皮膚AGEs値が有意に増大すること、臨床特徴と関連することを明らかにした。GLO1 KOマウスの行動解析においては、行動量の減少、強制水泳試験における無動時間の短縮、驚愕反応の減少を明らかとした。CS性統合失調症、健常者のiPS細胞を樹立し、アストロサイトへ分化、誘導する系を確立した。精神疾患の多くの症例において糖尿病、心血管疾患、肥満など様々な合併症が問題視されているが、今後、身体疾患の増悪とも関連のあるCSを軸として、CSデータ資源を十分に有効活用することは、早期からの精神疾患、身体疾患の予防介入、心身健康の増進に資する予防医学にも貢献できるものと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
PEN高値、VB6低値の統合失調患者の臨床経過の特徴として長期入院中の治療抵抗性患者を指摘してきたが、本研究によって、PEN、VB6が重篤な陰性症状の一つである思考の解体、思考障害と強い関連を示すことが明らかにされた。また、他の内因性精神疾患におけるCS亢進について疾患特異性の検討をした結果、躁うつ病と統合失調症という2大内因性精神疾患のCS病態基盤の共通性を示唆しているものと考えられた。血漿PEN値と同様に、統合失調症では皮膚AGEsが健常群と比較して有意に高値を示した一方、神経症圏では有意差を認めなかったことから、内因性精神疾患と神経症圏ではCSに関連した病態メカニズムが異なることを示唆していると考えられた。以上、当該研究成果は着実に進展しており、おおむね順調である。
CSを含む糖化ストレスは、従来、身体疾患、特に糖尿病等の研究分野において精力的に行われてきた経緯があるが、近年、統合失調症の多くの症例でも糖尿病、心血管疾患、肥満など様々な合併症が問題視されている。また、重度精神疾患患者は平均余命が20年以上短いことを鑑みると、精神障害者の健康リスクに対する早期かつ効果的な介入の必要性が希求される。本研究におけるCSを軸に、データ資源を十分に有効活用することは、早期からの精神疾患、身体疾患の予防介入、心身健康の増進に資する予防医学にも貢献できるものと考えられる。適応拡大・臨床活用のため、血中AGEs、皮膚AGEsの動態変化と食生活習慣及び精神症状変化の交互作用について縦断追跡により検証を継続する計画である。
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