研究課題/領域番号 |
16H05383
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩田 錬 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 名誉教授 (60143038)
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研究分担者 |
寺崎 一典 岩手医科大学, 医学部, 講師 (60285632)
石川 洋一 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助手 (60361200)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロスケール合成 / 放射性薬剤 / フッ素-18 / PETプローブ / 自動合成 / 標識合成 |
研究実績の概要 |
1.当初本研究の基礎となる[18F]フッ素イオン(18F-)の濃縮法として我々が開発した電気化学的濃縮チップの使用を前提としていたが、研究開始後ほどなくKryptofix 222とKHCO3とのコンプレックス(K.222/KHCO3)のメタノール溶液と市販の使い捨て陰イオン交換樹脂(Waters Oasis MAX)を使用する新たな方法が、電気化学的方法では最大で60%であった濃縮回収効率を95%以上に改善できる効率的で迅速な18F-の調製法であることを見出した。この方法により、K.222/KHCO3の量を最小値4μmol(20 mM-200μL)で使用して無水の反応活性を有する18F-を効率良く得ることができた。 2.本法で得られた18F-を用いて溶媒のスケールを100μLまで減らし、18F-標識FDG、FMISO、THK-5351などの8種類のプローブ合成に応用し、文献値と比べ同程度の放射化学的収率で得ることができた。この成果を学術誌に投稿した。 3.18F-とK.222/KHCO3を含むメタノール溶液から効率的にK.222/K+だけを除去する方法を開発し、反応溶媒量が50μL以下でもK.222/KHCO3濃度を高めることはく標識反応が行える方法を開発した。18F-標識FDG、Fallypride、FET、FESに関して、使用する反応容器と反応溶媒量などの条件を最適化し、30μLまでは高い収率で合成できることを明らかにした。加えて、反応スケールを最小化することで分析用のHPLCカラムによる精製が可能であることを実証した。これらの成果を国際学会で発表する予定である。 4.開発したマイクロスケールの標識合成操作を自動化するため、マイクロシリンジを用いる自動合成モジュールの設計を進め、本年度は反応のための加熱炉とバイアルホルダーを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた電気化学的方法による無水の18F-調製法に代わり、イオン交換とメタノール溶媒で18F-を得る新しい方法を見出した。このため、標識反応に使用するK.222/KHCO3の量を任意に制御できるようになり、溶媒量を最小限にしてもK.222の濃度を一定に保つことが可能となった。加えて、使用する陰イオン交換樹脂は、繰り返して効率を減じることなく何度でも利用でき、実験回数を大幅に増加できた。また、当初目標としていた100μL以上に溶媒スケールを小さくでき、種々の18F-標識プローブに関して検討を加えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
反応スケールを10μLまで減じた合成も試みてきたが、このスケールでは合成収率は大幅に低下した。この原因を明らかにして、収率を低下させることなく更なるマイクロスケールでの18F-標識合成を可能にする方法の開発を目指す。また、このマイクロスケール合成の汎用性を示すため、今後入手可能な前駆体を用いて新しい18F-標識プローブ合成に応用する。 マイクロスケール標識合成に適する精製法として分析カラムによるHPLC精製と使い捨ての固相抽出カラムによる精製法の開発を進める。 次年度では自動合成モジュールの本体であるマイクロシリンジ駆動部分を中心に試作を進める。
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