研究課題/領域番号 |
16H05392
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中山 守雄 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (60164373)
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研究分担者 |
西 弘大 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10719496)
工藤 崇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (20330300)
淵上 剛志 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (30432206)
吉田 さくら 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (40736419)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジェネレータ / PET / ガリウム-68 / ゲルマニウム-68 / クエン酸ガリウム / 炎症イメージング |
研究実績の概要 |
68Ga(ガリウム)は、68Ge-68Gaジェネレータを用いることによって、サイクロトロンを設置することなく、医療現場で産生できるPET核種である。市販の全てのジェネレータが、塩酸溶液によって68Gaを溶出するのに対し、我々が開発したジェネレータでは、68Gaを中性の溶出液で得ることができるため、1ステップの配位子交換反応により、多様な薬剤に転換できる薬剤製造システムの構築が期待できる。現在、最も良好な溶離剤としてクエン酸Naを用いているが、その際に、溶出液中の68Gaは、現在すでに放射性医薬品として使用されているクエン酸Ga(67Ga)と同一の化学形である事が期待できる事から、以下の検討を進めた。 ●非放射性のクエン酸Ga錯体および放射性医薬品として使用されているクエン酸Ga(67Ga)と、HPLC等を用いて、ジェネレータ溶離液中の68Ga錯体の存在状態に関する分析を行なった結果、炎症診断用の放射性薬剤クエン酸Ga(67Ga)とほぼ同一の化学形であることがわかった。 ●リーシュマニア症モデルマウス、脳マラリアモデルマウス、SFTSモデルマウスのPET撮像を試みた結果、いづれも、明瞭な68Gaの集積を示すPET画像を得ることができ、感染症によって引き起こされる炎症を、短時間で捉えていることが示された。 ●体内でも安定なGa錯体を形成するDOTAおよびNOTAを配位部位としてコンジュゲートしたペプチドと68Ga―クエン酸との1ステップでの配位子交換反応の条件を系統的に検討した。その結果を基に、ペプチドとしては、まず、αvβ3インテグリンを標的とするNOTA-cyclic RGDyKペプチドを調製し、68Ga標識を行った。さらに、がん細胞を移植した担癌マウスを作成し、68Ga標識NOTA-cyclic RGDyKペプチドを静注し、小動物用PETによるイメージングを行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
●ジェネレータから溶出された68Gaを分析し、現在、炎症のイメージングに使用されている、クエン酸Ga(67Ga)と比較してほぼ同様の分析結果が得られた事から、溶出液それ自体が.炎症のイメージングのためのPET用放射性薬剤として利用可能であることが明らかになった。事実、溶出液を用いて、感染症モデルマウスの炎症部位を、小動物用PETを用いて描出する事ができた。 ●次に、得られたクエン酸Ga(68Ga)を配位子交換によって,他の68Ga標識化合物に変換できれば、更に,多様なPET用イメージング薬剤に転換できることになる。そこで、現在、一般的にGaの標識部位として用いられているDOTAもしくはNOTAをコンジュゲートしたαvβ3インテグリンを標的とするRDGyKペプチドを、至適条件で68Ga標識し担癌動物に投与した結果、癌特異的に68Gaを集積させる事ができた。従って,我々のジェネレータで得られた68Gaは、配位子交換により,ワンステップで、他の生理活性ペプチドの標識に用いる事が出来ることが確認できた。ただ,今回は,HPLCによる分離操作を行なっているため,キット化には、簡便な分離操作についての検討を続ける必要はある。
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今後の研究の推進方策 |
●配位子交換による新規誘導体の68Ga標識とキット化の検討: 種々のヒトがん細胞には高発現していることが知られている葉酸受容体を標的とする68Ga薬剤を,以下の手順により製造し、平行してキット化への技術開発を進める。 ① 基本配位子としてNOTAを導入した新規葉酸アンタゴニスト(TP)の設計と合成を行う。② 67/68Ga―クエン酸との配位子交換により67/68Ga-NOTA-TPを製造する。③ 葉酸受容体を過剰発現したKB細胞を用いた67Ga-NOTA-TPの細胞内取り込み評価を行なう。④ KB細胞を移植した担癌マウスを作成し、小動物用PETを用い、68Ga-NOTA-TPの評価を行なう。 ●トランスフェリンの68Ga標識と悪性腫瘍イメージング薬剤としての評価: トランスフェリン(TF)は、鉄の運搬タンパクであるが、悪性腫瘍細胞に高発現したTFレセプターと作用し、細胞内に取り込まれる。そのため、放射性核種で標識したTFを用いたイメージングが、これまで数多く行われている。一方。鉄の結合サイトには、Gaも強く結合することが知られている。我々も以前に、新規ジェネレータから溶出した68Ga-クエン酸とアポトランスフェリンとを、室温で短時間振とうするだけの簡便な操作で、68Ga標識をTFを高収率で得られることを明らかにした。そこで、TFをキット化には最適な実施例として選択し,以下の点を検討する。①68Ga-クエン酸とアポトランスフェリンとの配位子交換反応条件を検討する。②調製した68Ga-TFを正常及び担がん動物に投与し、体内動態を評価する。
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