研究課題/領域番号 |
16H05393
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
織内 昇 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40292586)
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研究分担者 |
久保 均 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00325292)
富永 英之 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00393348)
大島 康宏 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主任研究員(定常) (00588676)
石岡 典子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員(定常) (30354963)
趙 松吉 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80374239)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CXCX4 / α線 / RI内用療法 / 癌幹細胞 / アスタチン / 放射免疫療法 / 膵癌 / At-211 |
研究実績の概要 |
211At標識抗CXCR4抗体の抗腫瘍効果を評価する際には、腫瘍組織だけではなく他の臓器への211At標識抗CXCR4抗体の分布も評価する必要がある。また副作用についても事前に動物実験で評価する必要がある。その際に211At標識抗CXCR4抗体から解離したフリーの211Atの体内動態の評価も必須である。 そのため本研究では、まず正常マウスにおけるフリーの211Atの体内動態を測定した。イソフルラン麻酔下で正常マウスに211Atを投与し、投与5分、1時間、3時間、6時間、24時間(後にイソフルラン麻酔下でマウスを屠殺し、主要な臓器を摘出して重量と放射能を測定した。 その結果、血液、血漿、心臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、腎臓、副腎、肝臓、骨および褐色脂肪への211At集積は時間とともに減少した。胃および精巣への211At集積は1時間と3時間で最も高く、その後時間とともに減少した。顎下腺では投与6時間で最も高い集積を示した。甲状腺への211At集積は時間とともに増加した。筋肉、白色脂肪、脳では低い211At集積を示した。 次に、125I標識抗CXCR4抗体(以下、ヨウ素標識抗体)を作成して基礎的な解析を行った。種々のがん細胞株の中でヨウ素標識抗体の取り込みが高い細胞を選別し、その細胞を移植した担癌モデルマウスにおける腫瘍の免疫染色を行った。抗体の免疫染色によりがん細胞における抗原発現レベルを調べ、細胞膜に高い抗原発現を示す細胞株を同定した。さらに、担癌モデルマウスにヨウ素標識抗体を投与し、投与6時間後に腫瘍と主要な臓器を摘出して重量と放射能を測定したところ、ヨウ素標識抗体は腫瘍に高集積し腫瘍/筋肉比は約18倍であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん幹細胞をい標的とした211At標識抗CXCR4抗体(以下、標識抗体)による治療の基礎検討を行う本研究において、標識抗体の抗腫瘍効果を評価する際には、腫瘍組織だけではなく他の臓器への標識抗体の分布も評価する必要がある。また副作用については、標識抗体とともに体内で乖離した211Atの関与も考慮する必要がある。そのためフリーの211Atの体内動態を事前に動物実験で評価する必要がある。 本研究では動物におけるフリーの211Atの体内動態を明らかにすることができた。また、125I標識抗CXCR4抗体のがん細胞株への取り込みを確認するとともに、免疫染色で抗原発現を確認した。さらに、その細胞を移植した担癌モデルマウスにヨウ素標識抗体を投与し、腫瘍への高集積を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、抗CXCR4抗体の211At標識を行い、標識効率および安定性を検討する。さらに211At標識抗CXCR4抗体のヒト腫瘍モデルにおける体内動態を、125I標識抗CXCR4抗体と比較し、CXCR4を標的としたα核種による治療応用の可能性を明らかにする。 さらに腫瘍集積性ならびに抗腫瘍効果の実験を行う。 本研究で得られた211Atの体内動態の結果と併せて、211At標識抗CXCR4抗体治療の毒性に関する基礎的な知見を得る。 これらの研究により、がん幹細胞を標的とする211At標識抗体の有効性に関する基礎的データを取得し、難治性腫瘍に対するα線による治療開発のための評価を行う。
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