研究課題/領域番号 |
16H05394
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研究機関 | 京都医療科学大学 |
研究代表者 |
遠藤 啓吾 京都医療科学大学, 医療科学部, その他 (10115800)
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研究分担者 |
大野 和子 京都医療科学大学, 医療科学部, 教授 (30247689)
大竹 英則 群馬大学, 大学院医学系研究科, 研究員 (60727535)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線防護・管理学 / 医療被ばく / 国民線量 / エックス線CT / NDB / エックス線透視 |
研究実績の概要 |
群馬県内の放射線診療施設の実態調査を行い、得られたデータと厚労省から発表されるNDB(national data base)を比較することにより、国民の受ける医療被ばく線量を推定した。群馬県内の主要13施設で、群馬県内実施されるエックス線CT検査のほぼ70%を把握できる。主要13施設において7月2週間に行われた約1万2千例のCT検査の内訳は、脳;21.4%。胸部17.6%。旨部~骨盤;31.4%。上腹部~骨盤;13.0%。その他;16.6%で、体幹部の撮影が大多数であった。全検査のDLP(dose length product)値から換算した線量は、CT検査1回当たり13.5mSvと、これまで報告されているCT検査1回当たり6.9mSvのほぼ2倍の線量となった。このような線量の増加は、CT装置の進歩によりCT撮影の範囲が大幅に広くなったためである。 群馬県のデータはほぼ全国平均であることが知られており、群馬県人口から換算すると、CTによる被ばく線量は、年間ひとりあたり2.9mSvと推定される。 単純X線撮影(胸部、骨など)については、群馬県内の主要13施設において調査した7千例余りの検査から推定すると、国民ひとり当たり、ほぼ年間0.8mSvと推定される。 今後さらにこの調査を発展させ、国民医療被ばく線量をより正確に推定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年10月12日厚労省から第1回NDB(レセプト情報・特定検診等情報データベース)が初めて公表されたことにより、群馬県内の検査数からわが国全体の医療被ばく線量の推定が、より正確にされるようになる。 エックス線CTについては、群馬県内の施設で行われる検査数の70%程度を把握しており、得られるデータの信頼度は高い。他の手法では絶対に出来ない、群馬県という地域性によるものである。一般エックス線撮影(胸部、骨など)については20%程度の把握率であるが、関係者の頻回の会合により信頼度の高いデータを得ることができた。 このように医療による国民線量3.874mSvの数値の再評価が必要なことが明らかとなった。本研究により国民の医療被ばくのより正確な線量が推定される。 2017年8月3日、日本学術会議より「CT検査による医療被ばく低減に関する提言」(委員長:遠藤啓吾)が公表され、その実現に向けて様々な活動が行われている。
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今後の研究の推進方策 |
1.群馬県内の全診療施設を対象に、放射線診療の全量調査を行う(平成30年7月1ヶ月間)。その結果からわが国の国民の被ばく線量を推定する。なお放射線治療のインターベンショナルラジオロジー(IVR)は各学会レベルで患者登録が進んでおり、本研究から除く。エックス線CT、胃透視、下部消化管透視、マンモグラフィ、核医学検査(PET/CTを含む)を対象とし、いずれも検診を含む。 2.CT検査を行った病院のPACSから送られてきた、CT検査時のCTDI、DLP、total DLPを保存する。ただし、これまでの手法では、①全てのCT装置とは対応できない。②検査部位、年齢、体重については、自動的に処理することができない。そこで本研究では、データを自動的に入力する技術を開発する。 3.群馬県のデータから、①わが国の医療被ばくによる線量を推定する。②CTによる線量調査については、10年間以上の実績があり、個々の施設の患者ひとりあたりの線量の推移、群馬県全体の推移を知る。③診療放射線技師の医療被ばくへの関心が高まり、結果的にCT線量は徐々に下がる。 群馬県のデータとNDBを利用することにより、より正確な国民の医療被ばく線量を推定することが可能となる。
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