研究課題
本研究は、細胞増殖、血管新生、浸潤・転移の誘導、アポトーシスと密接に関係する上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor, EGFR)のチロシンキナーゼ(tyrosine kinase, TK)に着目した新規のポジトロン画像診断(PET)用薬剤を開発し、臨床応用を行うものである。癌分子標的薬剤として注目されているgefitinib(イレッサ)に代表されるEGFR-TK阻害剤の治療効果予測や治療効果判定等を定量評価し得る分子イメージング法を確立し、その阻害剤適応癌患者の層別化を可能にする画像診断を目指すものである。本研究でのPET薬剤は臨床応用に有望であり、このような薬剤による世界に先駆けてのPET検査臨床応用は、EGFR-TK阻害剤分子標的治療の一翼を強力に推進することが期待される。高いEGFR-TK阻害活性を有するには、gefitinibを代表とするキナゾリン骨格の4位に芳香環が導入され、その芳香環の3’位にハロゲン基のような電子吸引基が必要である。我々はその条件を満たすPET用薬剤:4-(anilino)pyrido[3,4-d]pyrimidine derivative ([18F]APP-1)の一つの合成に成功した。さらに新規イメージング化合物(F-18 FTP-2)の合成に着手した。量薬剤につき担癌動物を用いたPET検査を行った。EGFR発現パターンの異なる肺癌をヌードマウス或いはヌードラット皮下に移植した担癌動物モデルを作成し、動物用PET装置にてダイナミックイメージングを行った結果、両イメージング薬剤共に良好な画像が得られ、臨床イメージング候補として有望と考えられた。
3: やや遅れている
新規PET薬剤を用いた動物実験の結果、予想に反して臨床画像化が有望な複数の診断候補薬が得られたが、毒性安全試験委託は高額であり候補薬剤を1種類に絞りこむ必要があった。研究方式を変更し、合成できた複数診断候補薬の画像化を検討し、複数のPETデータ薬物動態解析、動物被ばくシミュレーション検討後、来年度早期に薬剤選定を行い、毒性安全試験を外部業者に委託し、結果受理を行う必要が生じた。
EGFR-TK選択的阻害剤の合成、放射性フッ素標識体の合成、PET薬剤の細胞内取り込み実験、新規PET薬剤を用いた動物実験、担ガン動物画像化を行い、平成31年3月までに、PETデータを用いた薬物動態解析、PET薬剤の動物被ばくシミュレーション、毒性安全性試験に向かう。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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