研究課題/領域番号 |
16H05398
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
嶋村 剛 北海道大学, 大学病院, 准教授 (00333617)
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研究分担者 |
島田 慎吾 北海道大学, 大学病院, 医員 (40755576)
深井 原 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (60374344)
布田 博敏 北海道大学, 保健科学研究院, 特任准教授 (60576172)
武冨 紹信 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70363364)
惠 淑萍 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (90337030)
早坂 孝宏 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (90415927)
木村 太一 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (90435959)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 臓器保存 / 肝移植 / 脂肪肝 / 臓器灌流 |
研究実績の概要 |
平成28年9月までに、肝冷保存における14-3-3の役割の検討、脂肪肝冷保存再灌流の評価法確立を行い、平成29年3月までに、正常肝の冷保存・低温灌流モデルの構築、体外灌流における薬物治療の効果、体外灌流の至適温度の検討を行う予定であった。平成28年8月、脂肪肝冷保存再灌流のモデルにおいて予想を大幅に上回る肝灌流速度となったため、再灌流モデルの流路改造等の対策に3ヶ月を要し、同研究とその費用をH29年度に繰り越した。H28年度、および、H29年度に繰り越したうえで、以下の研究を実施した。 ラットのM2 steatosis (30-60%)を作成し、単純冷保存(CS)はUW液,自作新液を用いて、正常肝は48時間、脂肪肝は24時間のCSを施した。さらに、UW-MP,自作の新規灌流液を用いて7-37℃で機械灌流 (MP)し、温度、pO2(450-550 mmHg)を調節した。また、MP時・再灌流時に抗酸化治療を追加した。これらの治療、コンディショニング法により良好に保たれたグラフトの肝組織や、肝細胞株抽出物はLC-MS/MSでタンパク質、脂質を網羅的に解析する方法を確立し、ウェスタンブロット、PCR、過酸化脂質、抗酸化能などの解析も確立した。 個々のデータは現時点で開示できないが、14-3-3ζの発現誘導、生存シグナルの増強法をまずin vitroで確認し、実際に14-3-3ζの発現を12時間以内に誘導する条件を見出した。また、そのメカニズムを探索する過程である種の性ホルモン関連シグナルが関与する可能性も見出した。さらに、同薬剤をドナー投与することにより、肝臓における14-3-3ζの発現を誘導できることも確認した。 これらの結果をH29年度の検討課題に反映させ、さらに詳細なメカニズム検討と、体外灌流時にコンディショニングを達成する方法論の検討へと進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年9月までに、肝冷保存における14-3-3の役割の検討、脂肪肝冷保存再灌流の評価法確立を行い、平成29年3月までに、正常肝の冷保存・低温灌流モデルの構築、体外灌流における薬物治療の効果、体外灌流の至適温度の検討を行う予定であった。平成28年8月、脂肪肝冷保存再灌流のモデルにおいて予想を大幅に上回る肝灌流速度となったため、再灌流モデルの流路改造等の対策に3ヶ月を要し、同研究とその費用をH29年度に繰り越した。H28年度、および、H29年度に繰り越したうえで、上記の研究を実施した。 H28年3月31日の時点で、当初の予定よりも遅れていたが、繰り越し申請後、H29年度中に予定していた検討を概ね終了し、想定外のいくつかの新知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の全体構想は、脂肪肝の至適灌流法を確立し、新規抗酸化治療の併用効果、14-3-3ζの発現誘導法、14-3-3ζ高発現グラフトのMP/抗酸化治療、等を併用し、これまで不可能であった脂肪肝からの臓器提供を実現することである。具体的には、1) 27-37℃、6時間以上の酸素化体外灌流を可能にする方策を確立する、2) 上記の方法を用いて、体外で14-3-3ζを高発現させる方法を確立する、3)14-3-3ζの高発現により、再灌流後の酸化的リン酸化、生 存シグナルを増強する、4) 酸化的リン酸化に随伴する酸化ストレスを新規抗酸化治療(H2, DHMBA)で軽減する、5) 種々の障害を予測可能なマーカーを確立する(肝組織、灌流液)、ことを目指している。H30年度には3)-5)をin vitro実験で検討し、ラットの肝臓レベルでのPOC取得までを目指す。
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