研究課題/領域番号 |
16H05398
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
嶋村 剛 北海道大学, 大学病院, 准教授 (00333617)
|
研究分担者 |
島田 慎吾 北海道大学, 大学病院, 医員 (40755576)
深井 原 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (60374344)
布田 博敏 北海道大学, 保健科学研究院, 特任教授 (60576172)
武冨 紹信 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70363364)
惠 淑萍 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (90337030)
早坂 孝宏 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (90415927)
木村 太一 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (90435959)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 肝移植 / 虚血再灌流 / 機械灌流 / 脂肪肝 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
脂肪肝の移植後障害を軽減する修復灌流法を確立し、移植前に予後を予測し得るマーカーを確立する為に、脂肪肝の至適灌流法を確立し、新規抗酸化治療の併用効果、14-3-3ζの発現誘導法、14-3-3ζ高発現グラフトのMP/抗酸化治療等を併用し、脂肪肝からの安全な臓器提供実現を目指すものである。 前年度までにラットの脂肪肝モデル、脂肪肝の冷保存と引き続く単離肝灌流(IPRL)による再灌流、正常肝の長時間冷保存・IPRL、in vivo肝70%温虚血再灌流、肝組織の脂質・脂肪酸の網羅的質量分析イメージング法、プロテオミクス解析 (LC-MS/MS) などの動物実験、解析方法を検討し、2018年度にこれらを確立した。細胞実験では14-3-3ζの発現誘導法を確立済みだが、ラットに同薬剤を投与すると、溶剤のDMSOの毒性により肝障害を呈し、細胞で可能であった効果を引き出せなかった。体外灌流中の肝臓にDMSO溶解薬剤を投与すると、灌流液が白濁し、門脈塞栓を呈した。本剤によるコンディショニングには薬剤の溶解、包接等の検討が必須であり、引き続き検討中である。 易傷害肝グラフトの移植前グラフト機能評価、あるいは、移植前に移植後のグラフト傷害、予後を予測するマーカーを探索するために、質量分析イメージング法によって脂質、脂肪酸の推移を検討した。虚血中の変化を鋭敏に検出するために、in vivo肝70%温虚血再灌流モデル作成し、虚血時間を15分から90分まで振り、虚血前、虚血終了時、再灌流後1, 6時間の組織を解析した。再灌流後6時間の血中肝逸脱酵素活性、組織傷害を再灌流前に予測し得るマーカー候補分子が複数見出され、特異的な受容体を介してストレス応答を担うことが分った。このストレス応答が保護性、傷害性どちらに作用するのか、また、正常肝、脂肪肝で相異があるのかを引き続き解析している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
14-3-3ζの発現誘導コンディショニングは薬剤の溶解性、溶剤の毒性の問題で進められず、予定していた体外灌流コンディショニング後の肝組織試料を採取できず、その後の種々の解析ができない状態である。傷害軽減、生存シグナル増強の1つの手段として期待する14-3-3ζの機能増強コンディショニングが、臓器レベル、個体レベルでは評価できないので、他のコンディショニングの検討を重点的に進めること、あるいは、より強い保護効果を有する灌流液の組成を検討することで、全体の目的に対する進捗を確保することに努めた。
|
今後の研究の推進方策 |
当初予期しなかった薬剤溶解性という難題にあたり、一般的に短期間での解決は困難と考えられた。それ故、虚血中に大きく変動することを見出した分子とその受容体の機能解析を先に進めることとした。具体的には、1) 脂肪肝温虚血再灌流における同物質の推移、2) 傷害性か保護成果を肝構成細胞種毎に検討、3) 虚血終了時から傷害のピーク(再灌流後6時間)までに起こる傷害の級数的増強に対する同物質と受容体の役割を細胞株、初代培養細胞で検討することとした。
|