研究課題
組織の摘出や生検を施行せずに、血液などを用いて固形癌の診断やバイオマーカーの探索を行うリキッドバイオプシー法が提唱されている。本研究では唾液による早期乳癌のスクリーニング技術を確立する。さらに、進行再発乳癌患者の薬物療法による病勢の変化と、唾液メタボローム解析の発現パターンに、相関が認められるかを検証する。これにより、唾液によるリキッドバイオプシーが薬剤選択の基準として使用可能である事を示し、将来の臨床試験における基礎的根拠を確立することを目的とする。研究分担者である、慶應大学・先端生命科学研究所の杉本らは、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用いて、大腸癌や胃癌組織における網羅的な代謝プロファイルの測定を行ってきた。CE-TOFMSは解糖系・TCA回路に代表される中心炭素代謝や、核酸・アミノ酸合成など、エネルギー代謝に関連する主要な代謝物である、イオン性物質測定を得意とする。そのため、これらの代謝異常が多く認められる癌の研究や代謝レベルでのバイオマーカー探索に有用な方法であることが立証されている。これまでに慶應義塾大学において乳癌患者111名・健常者51名の計162名の唾液・血液サンプルが採取された。これによると、唾液より205の代謝物が定量可能であり、そのうち健常者と手術可能早期乳癌患者(未治療)の間で有意差が認められた物質は約60種類であり、唾液により良好に乳癌患者を健常者と鑑別することが可能であった。これらサンプルを健常者・DCIS・浸潤癌の3つに分け、統計学的解析により、健常者+DCIS群と浸潤癌の代謝産物に有意な差を認めた。さらに機械学習を用いて代謝産物測定パターンから人工知能により浸潤癌を見分けることが可能であった。今後はこれらを乳癌初期スクリーニングに適用を行っていく。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Sci Rep.
巻: 13;8(1) ページ: N/A
10.1038/s41598-018-30482-x.
Cancers
巻: 10(2) ページ: N/A
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