研究課題/領域番号 |
16H05413
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
粕谷 英樹 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (00402636)
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研究分担者 |
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
駱 晨虹 名古屋大学, 医学系研究科, 招へい教員 (40759627)
藤井 努 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (60566967)
珠玖 洋 三重大学, 医学系研究科, 寄附講座大学教員 (80154194)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HF10 / 腫瘍溶解ウイルス / 免疫チェックポイント / PD-L1 |
研究実績の概要 |
腫瘍溶解性ウイルスHF10は名古屋大学ウイルス学教室で開発されたバイオ製剤であり、本研究室で投与経路・併用療法の研究を継続的に行って来ている。HF10は腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス (HSV)であり、遺伝子変異により腫瘍のみに感染し腫瘍を破壊する。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍特異的なリンパ球の誘導など、癌ワクチン(In situ Vaccination)として転移腫瘍を含む全身療法としての効果が明らかにされた。本研究はin situ Vaccinationとして認識されてきた腫瘍溶解性ウイルスHF10がどの様な免疫学的機序で全身的な抗腫瘍作用を示すのか、また、併用療法として免疫チェックポイント阻害剤との最も効果的な組み合わせや投与方法について検討し、次世代の免疫学的抗癌剤として実臨床応用に繋げる事を目的とし、進めている。HF10のマウス膵臓癌細胞株PAN02ならびにマウス扁平上皮癌細胞株SCC7に対するin vitroおよびin vivo抗腫瘍効果を検討したところ、HF10は強い抗腫瘍効果を示した。さらに、免疫チェックポイント阻害剤であるPD-L1抗体と併用し、抗腫瘍効果が増強するか検討したところ、SCC7に対してHF10とPD-L1抗体の相乗的な抗腫瘍効果を認められたが、一方、PAN02に対しては併用効果は見られなかった。HF10ならびにPD-L1抗体併用治療に対して、SCC7とPAN02は異なる感受性を示した。その機序を解明するために、マウスの皮下に移植したSCC7またはPAN02の腫瘍内にHF10を投与し、腫瘍のPD-L1の発現を調べた。その結果、SCC7においてHF10によりPD-L1の発現の著しい上昇が見られたが、PAN02では発現上昇が見れらなかった。このHF10によるPD-L1発現誘導の差が、併用効果の有無に関連すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的はHF10の腫瘍抑制効果に於ける免疫学的解析と、腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に関する詳細なデータを得ることである。腫瘍細胞のPD-L1の発現様式ならびHF10がin vivoにおいて腫瘍細胞のPD-L1の発現を誘導すること、さらにHF10が免疫チェックポイント阻害剤であるPD-L1抗体との併用療法において相乗的に抗腫瘍効果が高まることを明らかにしたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
HF10と免疫チェックポイント阻害剤であるPD-L1抗体との併用療法において、腫瘍間に感受性の差が見られた。併用療法に感受性の腫瘍はHF10治療によりPD-L1の発現が上昇し、非感受性の腫瘍はPD-L1の発現上昇が認められなかった。in vitroならびにin vivoにおいて、HF10はそれら腫瘍に対して同等の抗腫瘍効果を示したことから、腫瘍による感受性によって、併用効果に対する感受性の差が生じたと考えるのは困難である。従って、腫瘍内に浸潤した免疫担当の違いにより、腫瘍内の環境に差が生じたと考えられることから、今後、それら腫瘍内にどのような免疫細胞が浸潤したかを注視し、腫瘍内環境の検討を行う。
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