研究課題/領域番号 |
16H05414
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
波多野 悦朗 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (80359801)
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研究分担者 |
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
瀬尾 智 京都大学, 医学研究科, 助教 (70646546)
田浦 康二朗 京都大学, 医学研究科, 講師 (80378629)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | SOS / プロテオミクス解析 / 大腸癌肝転移 / オキサリプラチン / ミニブタモデル |
研究実績の概要 |
本研究では化学療法に起因する肝障害で、大腸癌肝転移に対する集学的治療において問題となるsinusoidal obstruction syndrome(SOS)のミニブタモデルを作成して、SOSの病態と発症メカニズムを明らかにし、そのバイオマーカーを同定することを目的とする。(マイクロミニブタにおけるオキサリプラチン誘導性SOSモデルの確立)これまでにヒトSOSの病態と同一と考えられる動物モデルは存在せず、本研究ではまずヒトに遺伝・解剖学的に最も近いブタを用いてオキサリプラチン誘導性SOSモデルを確立する。(SOSのバイオマーカーの検討)SOSの発症から進行までの各段階における肝臓ならびに血清プロテオミクス解析により、SOSのバイオマーカーを明らかにする。(ヒトSOS標本における妥当性の検討)大腸癌肝転移切除標本から、ブタモデルにおいて得られたバイオマーカーの妥当性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
5か月齢の雄性マイクロミニブタを富士マイクラ株式会社(静岡)より購入しヒトで大腸癌に対して用いられている化学療法レジメンFOLFOX療法(oxaliplatin (L-OHP) + 5-FU + Leucovorin (l-LV))の適切な投与量決定のために、まずは標準投与量で2頭検討した。FOLFOX標準投与量群(L-OHP:85 mg/m2、l-LV:200 mg/m2、5-FU静注:400mg/m2、 5-FU持続静注 2400 mg/m2)。FOLFOX療法は0週から開始し、2週間ごとに計12回の経静脈的投与を行った。 (標本採取のタイミング)2週ごとの薬剤投与時に採血を、第4週・10週・16週・24週にそれぞれ全身麻酔下に開腹肝生検を行う。 (血液検査)肝障害:AST、ALT、γ-GTP、総ビリルビン、ヒアルロン酸 凝固機能:血小板、 PT、aPTT、フィブリノゲン、プロテインC、プロテインS、ATIII、vVF、第8因子 その他報告されているSOSに関連する因子:血清VEGF (肝生検組織学的検査)HE染色においてDeLeveらあるいはRubbia-Brandtらの報告したスコアに基づいてSOSの評価を行う。Masson trichrome染色によりSOSによる肝線維化の評価を行う。 しかし、標準投与量では2頭とも12回の投与を待たずして死亡してしまったため、薬学部や獣医に原因を相談したが、明確な死因は特定できなかった。しかし事態を重く受け止め、次に50%投与量で2頭の治療を開始した。これまで2頭ともに生存中であるが、現在のところ血液検査・病理検査ともに明らかなSOSの像を呈してはしない。 また、ミニブタへの静脈ポート造設が困難であつたことや、化学療法中の嘔吐のコントロールに難渋したことも研究が「やや遅れている」原因であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も5か月齢の雄性マイクロミニブタを富士マイクラ株式会社(静岡)より購入しヒトで大腸癌に対して用いられている化学療法レジメンFOLFOX療法(oxaliplatin (L-OHP) + 5-FU + Leucovorin (l-LV))の適切な投与量決定のために、まずは50%投与量で施行している2頭をさらに継続しSOSが出現するかを検討する。加えて75%投与量群も2頭並行して行う。こちらの群に関してもまずは2週間ごとに計12回の経静脈的投与を行う予定である。(標本採取のタイミング)2週ごとの薬剤投与時に採血を、第4週・10週・16週・24週にそれぞれ全身麻酔下に開腹肝生検を行う。(血液検査)肝障害:AST、ALT、γ-GTP、総ビリルビン、ヒアルロン酸 凝固機能:血小板、 PT、aPTT、フィブリノゲン、プロテインC、プロテインS、ATIII、vVF、第8因子 その他報告されているSOSに関連する因子:血清VEGF(肝生検組織学的検査)HE染色においてDeLeveらあるいはRubbia-Brandtらの報告したスコアに基づいてSOSの評価を行う。Masson trichrome染色によりSOSによる肝線維化の評価を行う。昨年度の経験を踏まえ、ミニブタへの静脈ポート造設の位置や手技を改善し化学療法中の嘔吐のコントロールにも積極的に制吐剤を投与して脱水にならないように管理することでより安全に化学療法が行えると考えている。
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