研究課題/領域番号 |
16H05415
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
掛地 吉弘 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80284488)
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研究分担者 |
青井 貴之 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (00546997)
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (30346267)
鈴木 知志 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (30457080)
岡田 誠治 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (50282455)
山下 公大 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (80535427)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 術前治療 / 低酸素 / 免疫応答 / CD8+細胞 / iPS |
研究実績の概要 |
消化器癌集学的治療として、放射線・化学療法を行うと低酸素環境に陥るが、腫瘍組織は低酸素応答性誘導因子(HIF)を発現し、低酸素環境下での血管新生の促進や 代謝活性の亢進により微小環境や細胞そのものの性質を変化させ、生存を維持する。元来、正常細胞が環境の変化に対応する転写調節機構を腫瘍組織が利用して いるとも言えるが、同時に免疫細胞も環境の変化に対応する性質を持ち合わせ、これに対応する。この低酸素環境への応答メカニズムを詳細に解析し、放射線及び分子標的薬、さらには細胞に対する遺伝子調節技術や培養技術といったモダリティーを用いて腫瘍や免疫細胞を標的にした消化器癌の術前・術後治療を開発す る研究である。免疫チェックポイント阻害剤、特に PD-1(Programmed cell death-1)や CTLA-4 に関連した分子標的薬の抗腫瘍効果が注目を集めている。これらの機序が消化器癌における術前治療に効果が証明されている、食道癌、直腸癌に着目し、治療抵抗性を示す低酸素状況下での免疫細胞応答のメカニズムを明らかにすることで、効果的な免疫学的治療システムを構築し、介入し、新規周術期補助療法を確立することを目的として開始された研究である。免疫チェックポイン ト関連薬と低酸素状態における相乗効果や、効果的な腫瘍反応性 CD8+T細胞の効率的な誘導方法の検討を行っている。さらに、これらの結果を元に、術前、術後 の免疫補助療法の検討を行うことが、本研究の目的である。ヒト術前治療及び手術を介して得られたサンプルを用いて解析している。 放射線(化学)療法下の低酸 素免疫応答のメカニズムを解明し、食道癌及び直腸癌に関する新規補助療法を確立することを目的とした研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス大腸癌腫瘍樹立後、放射線療法モデルでの免疫応答を解析しており、CD8+T細胞が腫瘍内へ誘導され、PD-L1+免疫細胞が誘導されていることを確認した。腫瘍内への CD8+T細胞の増加のメカニズムが疲弊と関連しており、リンパ球の遊走も含めて、現在、解析を行っている。抗体薬については、抗Tim-3抗体の投与と放射線の併用を行い、至適投与時期についても 明らかになっている状況である。腫瘍の新たな治療モデルとして提案している、CD8+T細胞誘導NKT細胞治療の検討も行っており、α-galactosylceramideを 樹状細胞に付加し、腫瘍抗原を導入したワクチンを用いて、NKT細胞を介してCD8+T細胞を誘導し、抗腫瘍効果を示すモデルの作成に成功した。これを用いて、放射線治療との併用での相乗効果を表す指標の検討及び評価を行っている。 ヒトでは直腸癌術前化学放射線療法後の治療前生検及び切除標本の標本解析を行い、腫瘍免疫微小環境に及ぼす影響に関しては、明らかにすることができた。また、CD8+T細胞が腫瘍内へ誘導されること、PD-L1+免疫細胞が誘導されていることを明らかにした。これら二つの細胞群が正の相関性を示しており、一定の腫瘍免疫環境の変化が、予後良好の因子である可能性が示唆された。 また、食道癌術前化学療法に関しては、CD8+T細胞が腫瘍内へ誘導され、PD-L1+細胞が誘導されていることを示し、予後との相関性は早期に限って言えることを示した。 これらの一定の成果を得たので、前向き研究を計画している。 異種移植モデルに関して作成できた状態で、放射線治療を行い、各免疫関連分子の発現の変化を経時的に解析している状況である。さらに詳細な免疫環境の変化を捉える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
マウスモデルでは、誘導されたCD8+T細胞において、さらに腫瘍反応性(抗原特異性)及びそのclonalityを検索し、CD8+T細胞の反応性を明らかにする。ヒト末梢血リンパ球の評価を進めているが、疲弊の程度やサイトカインに関しては、測定しているが、症例の 更なる集積が必要である。 また、ヒト前向き研究に関しては、研究計画立案は終了し、倫理委員会での審査中である。前向き研究で、血液サンプル、腫瘍標本、切除標本 を計画的に採取し、免疫細胞及び関連分子を解析を進め、腫瘍免疫微小環境のさらなる解析を進める予定である。一方、iPSに関連する疲弊T細胞の若返り研究は停滞している。腫瘍浸潤リンパ球の採取に苦慮しており、細胞を樹立するに十分な、数の確保が困難で、より良い抽出条件を検討している。より良好な腫瘍浸潤リンパ球の採取を術源するべく、条件設定を再度、考慮する必要がある。
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