研究課題
本研究では、標的細胞への感染メカニズムとmicro-RNAのウイルスゲノム構造の異なる2種類のテロメラーゼ依存性癌特異的蛍光標識ウイルス製剤(OBP-401、OBP-1101)を組み合わせ、蛍光発現パターンを解析することで、胃癌、膵癌などのCY陽性あるいは陰性の消化器がん患者の予後をさらに層別化するデュアル体外診断システムを開発することを目的とする。OBP-401はCoxsackievirus and adenovirus receptor(CAR)を介して標的細胞に感染し、テロメラーゼ活性依存性に増殖することでGFP蛍光を発現する。したがって、CAR発現が低い血球系細胞や他の正常細胞でも、いったん感染が成立すれば、テロメラーゼ活性に応じてGFP蛍光発現が生じてしまう可能性がある。一方、OBP-1101はヒト細胞で広範に発現するCD46表面抗原を受容体として標的細胞に感染するが、細胞内で血球系細胞に特異的なmiR-142-3p標的配列が機能することで、例えテロメラーゼ酵素が活性化されていても、その増殖・複製は強力に抑制されると推測される。本年度は、胃癌患者63例、膵癌患者23例で解析を行った。胃癌患者では、401陽性 20例(47%)、1101陽性 14例(33%)であり、401陽性/1101陽性 14例(33%)、401のみ陽性 6例(14%)、1101のみ陽性 0例(%)であった。膵癌患者では、401陽性 6例(26%)、1101陽性 6例(26%)であり、401陽性/1101陽性 5例(22%)、401のみ陽性 1例(4%)、1101のみ陽性 1例(4%)であった。今後、予後との相関を検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、胃癌患者63例、膵癌患者23例で解析を行い、GFP蛍光発現陽性の非癌細胞の免疫組織学的解析までは至らなかったが、複数の消化器癌においてGFP陽性細胞数のデータを十分集積で来たので、おおむね順調に進展していると言える。
1)消化器がん患者の腹腔洗浄液の臨床検体を用いた解析:進行胃癌および他の消化器がん患者の腹腔洗浄液の臨床検体を集積し、2つの蛍光標識ウイルス試薬を用いたデュアル体外診断システムにてGFP陽性細胞数による症例の層別化を行い、前向きに予後との相関を検証することで、臨床的なPOC(proof of concept)の確立を目指す。2)治療介入を目指した前向き臨床研究の立案:本技術の利便性と有用性が認められれば、症例の層別化による集中治療、標準治療、低用量維持療法などの治療選択が、無再発生存期間や全生存期間に与える影響を比較検討する前向き臨床研究を計画する。3)臨床検体からの培養細胞系の樹立と機能解析:消化器がん患者からの腹腔洗浄液を2つの蛍光標識ウイルス試薬により分類し、それぞれを培養系に移行することで継代可能な細胞集団を樹立する。また、必要があればマウス腹腔内や背部に移植することで、in vivoでの継代や機能解析も応用する。それらの細胞の起源を免疫蛍光染色で確認するとともに、細胞生物学的および分子生物学的機能解析を行う。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件)
Molecular Cancer Therapeutics
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