研究課題/領域番号 |
16H05417
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大塚 隆生 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20372766)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / IPMN / 膵管内播種 / 転移 / 再発 |
研究実績の概要 |
1.通常型膵癌異時性残膵再発例の臨床病理学的検討と分子生物学的解析 主膵管型IPMN由来膵癌のmRNAマイクロアレイで二次性病変と初発病変の遺伝子群の機能を調べたところ,腫瘍増殖制御や細胞接着,細胞死などの重要な生物学的プロセスが含まれていた. また獲得された遺伝子機能群には細胞外基質や細胞接着などの細胞遊走能に関する機能が含まれていた.また有意に発現が増加している85個の遺伝子の中で,膵癌での発現パターンが報告されているMUC5AC,S100P,REG4,CLDN18,PSCA,HPSE,AGR2,IHHなどが同定された。 S100P,CLDN18,IHH,AGR2,HPSEの5つのタンパク質発現を調べるため,免疫組織化学染色を行ったところS100P,CLDN18,AGR2に対してはIPMNのサンプル全例で発現は陽性であった。一方、IHHとHPSEではそれぞれ64%と89%の陽性率であった.5つのタンパク質発現パターンの一致率は同一クローンのIPMNでは40例中38例(95%)で一致していた. 2.残膵再発高危険群の同定と早期診断法開発 次世代シーケンサーを用いた解析では、膵内局所再発群2例でそれぞれ28個、15個の遺伝子変異を認めた。その内、同一の遺伝子変異は、それぞれ15個(54%)、12個(80%)であった。残膵新規病変群では、41個の遺伝子変異を認め、同一の遺伝子変異は9個(22%)であった。膵内局所再発群では同一の遺伝子変異にKRAS、TP53、SMAD4、CDKN2Aの変異を認めたが、残膵新規病変群では、KRAS、TP53、SMAD4、CDKN2Aで同一の遺伝子変異は認めなかった。膵液を用いたKRAS変異解析では残膵癌術前精査で得られた膵液の遺伝子変異は全例で病変部の遺伝子と類似した変異パターン示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主膵管型IPMNの膵管内播種に関してはmRNAのマイクロアレイで相同性を証明し、この結果をAnnals of Surgery誌に掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
1.通常型膵癌異時性残膵再発例の臨床病理学的検討と分子生物学的解析 さらに播種病変の悪性度の変化や転移機序を明らかにするためにはゲノムレベルでの解析が必要であり、今後は次世代シークエンスやwhole genome sequenceを行う予定である。Tissue tablet法で採取した新鮮組織を用いてマルチサンプリングの上DNAを抽出し、ファウンダー遺伝子、ドライバー遺伝子を同定し、クローン進化図を作成して以下の早期診断法に向けてマーカー検出を行う。 2.残膵再発高危険群の同定と早期診断法開発 DNAのほかに膵液中エクソソームに着目し、そこに含まれるDNAあるいはmicroRNAを抽出し、膵癌早期診断に有用なマーカーを同定する。Exosomeは各種細胞から分泌される小胞で、RNAやタンパク質が安定して内包されている。様々な体液中においてexosomeの存在が報告されているが、膵液中の報告はない。術前ERCP下に膵液採取が可能であった膵癌患者を対象とし、対照群は慢性膵炎とする。膵液から超遠心法を用いexosomeの抽出を試み、次にExosome及び全膵液よりmiR21、miR155の発現解析を行い、膵癌診断能を血清CA19-9値及び膵液細胞診など、他の診断法とも比較する。さらに上記1で得られた膵癌早期診断に有用なDNA変異も検出可能かを調べる。
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