研究課題
これまで本研究からGISTのKIT変異体のリン酸化は、細胞膜ではなくゴルジ体で起こっていることが明らかになった。今回、GIST細胞でKITタンパク質の小胞体→ゴルジ体輸送を阻止すると、KITリン酸化が起きず、細胞増殖が止まることを見出した。ゴルジ体に移動できないKITは、小胞体でホスファターゼによって脱リン酸化されていることを明らかにした。KITのゴルジ体での自己リン酸化、および小胞体での脱リン酸化は、イマチニブ感受性型・耐性型いずれのKIT変異体でも同様に起こっていた。SCLIMを用い、蛍光タグをつけたイマチニブ(イマチニブの1/10のKIT阻害活性を持つ)の細胞内局在を詳細に解析した。BODIPYならびにNIBを付加したイマチニブは速やかに細胞内に取り込まれ、主にライソソームに集積し、一部ER様の局在分布を示した。SCLIMで解析では、蛍光タグ付イマチニブはライソソーム内腔ではなくライソソーム膜上に局在することが示唆された。Turn-ONシステムでも、ターンオンタグ付イマチニブ(イマチニブの1/10のKIT阻害活性を持つ)は、細胞内に取り込まれた後、ライソソームならびにER様の局在を示し、イマチニブを同時に加えると、ライソソームとER様に局在する蛍光シグナルが抑制されたことから、イマチニブはライソソームならびにER様局在を示すことが強く示唆された。一方で、イマチニブはUV領域の励起光で蛍光を発することから、蛍光標識を行わず多光子励起顕微鏡によるイマチニブの細胞内局在測定を試みているが、まだ測定法の確立に至っていない。現在までの進捗状況はおおむね順調に進展している。小胞体-ゴルジ間の輸送阻害剤のスクリーニングとin vitroでの活性確認、動物実験を計画している。また、多光子励起顕微鏡の高感度化をはかる予定である。
2: おおむね順調に進展している
GISTのKIT変異体のY703, 730, 936リン酸化が、これまで考えられてきた細胞膜ではなくゴルジ体で選択的にリン酸化されていることを明らかにした。それらのリン酸化部位は、新規合成直後の小胞体ではホスファターゼにより脱リン酸化されていることを見出した。KITのゴルジ体での自己リン酸化および小胞体での脱リン酸化は、イマチニブ感受性型変異・耐性型変異にかかわらず、どちらのKIT変異体でも同様に起こっていた。種々のタグを付加したイマチニブを作成し、その細胞内動態および局在の解析を行った。これらタグ付イマチニブは全てライソソームおよびER様局在を示し、タグを付加していないイマチニブによる競合阻害によりそれらのオルガネラに局在する蛍光シグナルの減弱が見られたことから、タグを付加していないイマチニブもライソソームとER様の局在を示すことが強く示唆される結果を得ることが出来た。加えて超解像顕微鏡システムにより蛍光タグ付イマチニブがライソソームの膜に局在することも明らかとすることができ、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
シグナルの場へのKITの移行阻害が、新たな阻害戦術となるかもしれないので、小胞体-ゴルジ間の輸送阻害剤のスクリーニングとin vitroでの活性確認, 動物実験を計画している。また、ゴルジ体がKITシグナルのプラットホームであることが明らかになったので、そこへの分子標的薬の送達技術の創出に取り組む。本年度は多光子励起顕微鏡の高感度化をはかる予定である。イマチニブそのものの蛍光は、一般的な蛍光分子の100分の1以下の蛍光しかしめさないことを明らかにした。イメージングインテンシファイア等により高感度化し、治療に用いられるイマチニブそのものの細胞内局在を明らかにすることを目指す。合成に関しては、アジド基型のTurn-ONシステムの有効性を検証するとともに、イマニチブのゴルジ送達を目指した分子設計を行う。更に、イマチニブ特異的な抗体が作成できた。この抗体を用いpreliminary experimentsで事前に動物に投与し組織に分布したイマチニブや、細胞レベルでも事前にイマチニブ投与してライソソーム蓄積したイマチニブが確認できた。この抗体の反応は、イマチニブによる競合阻害により消失することから、この測定系が正しく機能していることが示唆された。
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