研究課題
大動脈瘤の主病態は、浸潤・集積したマクロファージによる炎症増幅と組織破壊である。マクロファージ抑制により瘤の炎症病態を是正することができれば、瘤壁組織の退縮治癒を促す可能性は高い。しかし、免疫抑制・感染症が一方で懸念される。研究代表者は、炎症増幅と組織破壊に関わるマクロファージの病的機能のみを選択的に制御することを着想し、そのための標的分子としてfocal adhesion kinase(FAK、接着斑キナーゼ)に着目した。本研究の目的は、FAKが瘤壁マクロファージの病的機能異常を選択的に制御する分子機構を解明し、FAKを標的とする有効かつ安全な大動脈瘤退縮治療法を新たに創出することである。そのため、平成30年度に以下の計画を実施した。【計画Ⅳ.FAK阻害が大動脈瘤に対する有用な予防・治療法であることの実証】野生型雄マウスを用いて塩化カルシウム局所刺激による腹部大動脈瘤モデルを作成し、小径瘤が形成される時期(カルシウム刺激後3週目)を待ってから、FAK阻害剤PF573228の治療的投与を開始した。対照として、Vehicle投与を行った。その結果、Vehicle投与ではカルシウム刺激後3週目から6週目の間に瘤径が増大したが、FAK阻害剤投与ではマウス大動脈瘤の進行・拡大がほぼ完全に防止できた。さらに、培養ヒト大動脈瘤組織の実験系において、FAK阻害剤を添加した。その結果、ヒト瘤組織においてもFAK阻害剤投与によって瘤病態に関連する炎症系分子が抑制されることが示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Nat Rev Dis Primers
巻: 4 ページ: 1-22
10.1038/s41572-018-0030-7