研究課題
大動脈解離研究を発展させるため、再現性の高いマウスモデルを開発した。このモデルにおいて様々な分子介入を加え、ベイジアン・ネットワーク解析を行った結果、約850遺伝子からなる解離関連遺伝子ネットワークが得られた。密接に関連して制御される遺伝子群の発現クラスターがさらにネットワークを形成しており、各発現クラスターは細胞周期、炎症応答、細胞遊走、細胞サイズ、細胞外マトリックス、筋細胞分化制御に関わる遺伝子群で構成されていた。解離易発症性であるヒト大動脈2尖弁患者の大動脈における遺伝子発現を正常3尖弁の大動脈と比較した。解離易発症大動脈ではチロシンキナーゼ/mTOR経路活性化を示唆する遺伝子発現パターンが認められた。正常大動脈ではmTOR経路の主要分子AKTの活性化は認められなかったが、解離易発症大動脈では中膜外側でAKTが活性化していた。マウス解離モデルにmTOR複合体1 (TORC1) の阻害薬ラパマイシンを投与したところ、解離発症は完全に抑制され、細胞周期遺伝子群の発現クラスターが選択的に抑制された。解離発症後のラパマイシン投与では大動脈壁破壊は抑制された。これまでに我々が同定した解離関連シグナル経路(JNK、JAK/STAT、TGFβ/Smad、サイクリン/CDK)の活性を検討したところ、ラパマイシンはサイクリン/CDKを選択に抑制し、平滑筋細胞選択的にJAK/STAT経路を活性化した。以前我々は平滑筋 STAT経路が大動脈保護的に働くことを明らかにしており、その活性化がラパマイシンによる大動脈解離阻止メカニズムに一つであることが示唆された。以上より、mTOR経路 (TORC1) は解離発症および破壊進行の双方で重要な役割を果たしており、その阻害は細胞周期抑制と平滑筋保護メカニズム活性化により解離を阻止することが示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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