研究課題/領域番号 |
16H05431
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
豊岡 伸一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30397880)
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研究分担者 |
三好 新一郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00190827)
冨田 秀太 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10372111)
枝園 和彦 岡山大学, 大学病院, 助教 (30708079)
山本 寛斉 岡山大学, 大学病院, 助教 (40467733)
阪口 政清 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70379840)
宗 淳一 岡山大学, 大学病院, 講師 (90559890)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肺癌 / 分子標的薬 / 分子バーコード / 次世代シーケンサー / 薬剤耐性 / EMT / PDX |
研究実績の概要 |
分子バーコード手法の開発については、原発性肺癌手術症例から得られた新鮮凍結組織よりgDNAを抽出し、次世代シークエンサーによって遺伝子変異解析を行った。分子バーコードを使用したシークエンスと使用しないシークエンスで2通りの解析を行い比較検討することで、分子バーコードによりPCRエラーを除去し再現性のあるデータを得られることが確認された。このようにエラーを判別・除去することで0.2%程度の変異まで正確に検出可能となった。 発現プロファイル解析によるEGFRチロシンキナーゼ(EGFR-TKI)耐性化予測アルゴリズムの確立、およびドラッグリポジショニング解析により得られた薬剤の評価については、様々なEGFR-TKI耐性細胞株を樹立してその特徴および候補薬剤の治療評価を行った。上皮間葉以降(EMT)化に関連する耐性克服の新たなバイオマーカー候補分子を特定し、特定された分子に対する標的治療薬の効果を単剤および従来の分子標的薬との併用実験(in vitroおよびマウスモデル)で確認した。また、ドラッグリポジショニング解析でリストアップされた薬剤について、抗EMT作用および薬剤耐性解除への効果を検討した。現在のところ、これらの候補薬剤が上記のような作用を十分に発揮する結果は得られていないが、今後は引き続き複数の薬剤によるEMT化阻害作用を探るとともに、従来の分子標的薬との併用実験での耐性化阻害の確認を引き続き行う予定である。 PDC・PDXモデルについては、肺癌臨床検体を用いたPDXのなかで、マウス内において高頻度に転移を示す臨床検体を同定し細胞株化に成功した。このモデルを用いて転移および薬剤耐性に関わる因子を詳細に検討するとともに、これらを阻害する効果を有する薬剤の同定を上記検討とあわせて行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子バーコード手法の開発は再現性をもって有用性が確認された。また、薬剤耐性の検討においても、バイオマーカーとなる分子を特定し、特定された分子に対する標的治療薬の効果を細胞実験およびマウスモデルで確認した。これらで得られた結果の一部を学術集会で報告しており、研究計画に沿って概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、EGFR-TKI耐性獲得機構に関与する分子の阻害作用を有することが示唆された薬剤の効果を、様々なEGFR-TKI耐性細胞株を用いて検討する。また、特定された薬剤と同様の効果を示すと考えられる薬剤についても治療効果の検討を行う。PDC、PDXモデルの作成と治療戦略の実施についても、引き続き外科切除検体からのPDC・PDX作製および薬剤投与実験を行う。特にEGFR変異を有する症例を選択し、PDXの作成および薬剤治療(EGFR変異別の最適なEGFR-TKIとEMT化抑制剤の耐性獲得抑制効果の検証)を行う。具体的には、各患者から採取した腫瘍組織あるいはPDCのウルトラDeepシークエンス・発現プロファイ解析を実施し、EGFRメジャー・マイナー変異かつEMT化ポテンシャルを有する検体をマウスに移植しPDXモデルを作製する。作成に成功したPDXモデルを使用してEGFR変異別に最適なEGFR-TKIおよびEMT化抑制剤のon/off治療の2群の治療効果を評価する。同時に、治療後の腫瘍を採取し遺伝子発現プロファイル解析等による腫瘍の分子病態を解析する予定である。
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