研究課題
移植医療における課題である臓器不足の抜本的解消と長期予後の改善には、肺に豊富に含まれる血管内皮障害を契機とする炎症・凝固系/自然免疫系の活性化を制御することは必須である。特に本研究では、障害により生ずる内因性の炎症促進因子の制御や、炎症・凝固制御因子の枯渇に対する再賦活化に着目した研究を行っている。平成29年度は、これまでのミニブタ同種肺移植実験から得た知見を発展させた異種移植実験を推進した(目的3)。この結果、同種ミニブタ肺移植実験から炎症制御および拒絶反応効果が得られた一酸化炭素を異種肺移植の周術期に投与することによって、特にマクロファージを中心とする炎症制御という機序に基づき、異種移植肺の生着延長効果が得られることを明らかにし、この成果を国際学会誌に論文報告した。また前年度に引き続いて代表者が客員准教授を務める米国コロンビア大学においてブタ・ヒヒ間異種肺移植実験を更にすすめ、移植肺の急性拒絶に関わる因子の解析、あるいはそれを克服する治療法の開発を促進した。前述のマクロファージ制御による異種肺移植の生着延長効果という知見に基づいて、ブタ・霊長類間での凝固・炎症制御機構の相違という観点から、異種肺移植後のブタマクロファージ活性を制御するためにドナーブタにヒトCD47 遺伝子を導入した異種肺移植実験を進めた。この結果、肺胞血管内皮・上皮でのヒトCD47 高発現が、肺の生着延長に寄与することを明らかにし、これまでの世界最長となる異種移植肺の生着という成果を得、この成果を国際学術誌に論文報告した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は研究計画に従い、これまでに得られたMHC確立ミニブタを用いた慢性肺移植実験モデルによる結果を発展させ、予定通りに異種肺移植実験を進めることができ、順調に研究が進展しているものと判断する。
研究計画に従いこれまでの研究成果をさらに発展させ、更に異種肺移植の成績向上を図る実験を進める。これまでの実験から得られた肺組織検体や細胞学的検査の結果の解析を進め、特に炎症・凝固系/自然免疫系の活性化の制御という観点から生着阻害因子とその克服に焦点をあてて検討を進める。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
Xenotransplantation
巻: 印刷中 ページ: e12391~e12391
doi: 10.1111/xen.12391
巻: 25 ページ: e12359~e12359
10.1111/xen.12359
Current Opinion in Organ Transplantation
巻: 22 ページ: 541~548
10.1097/MOT.0000000000000465