研究課題
日本人肺腺癌の40%にEGFR遺伝子変異、3%にALK遺伝子再構成がみられ、これらに対するチロシンキナーゼ阻害剤は標準治療となっている。しかし、その他の肺癌への分子標的治療は確立していないことと、EGFR及びALK阻害剤が一旦奏効しても必ず耐性を獲得することが問題である。我々は、新規治療標的として2009年からMET遺伝子に注目しており、肺癌手術検体の解析でエクソン14を欠失する変異が3.3%あることを見出した。しかし、感受性試験や耐性機序解明に適した肺癌細胞株が存在しないため、レトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入技術でMET変異細胞モデルを作成しつつある。初年度の今年はEGFR耐性を中心に解析をすすめた。1)耐性機序の誘導: HCC4006細胞はエルロチニブで耐性にすると上皮間葉転換 (EMT)を獲得しやすい。そこで、EMTにある程度感受性のあるダサチニブを最初から併用して耐性株を樹立すると、EMTは起こらずオシメルチニブで治療可能なT790M変異を獲得した(Sesumi et al. Lung Cancer 2017)。2)L747S、D761Y、T854A変異の克服: ゲフィチニブ獲得耐性機序の約半数はT790Mであるが、上記変異も報告されている。これらを遺伝子導入して薬剤感受性を調べるとオシメルチニブが著効することがわかった (Chiba et al. BMC Cancer 2017)。3)新規L792F変異発見: 遺伝子導入肺癌細胞モデルから84個のアファチニブ耐性クローンを作成し解析すると、従来のT790M以外に12%でC797Sまたは新規L792F変異が検出された。C797SとL792F変異はそれぞれエルロチニブとダコミチニブで克服できることがわかった。 (Kobayashi et al. Mol Cancer Ther 2017)。
2: おおむね順調に進展している
MET肺癌細胞モデル作成と、EGFR肺癌に対する耐性機序解明及び耐性克服の研究を行ってきた。
MET変異細胞モデルを用いて、MET阻害剤の感受性を網羅的に解析する。さらに、これまでEGFR肺癌の耐性機序に関する研究で培ってきた手法を応用して、MET阻害剤の耐性機序解明と克服について研究を進める予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
BMC Cancer.
巻: 17 ページ: 印刷中
10.1186/s12885-017-3263-z
Lung Cancer
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