研究課題/領域番号 |
16H05435
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中里 信和 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80207753)
|
研究分担者 |
岩崎 真樹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 部長 (00420018)
神 一敬 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20436091)
菅野 彰剛 東北大学, 医学系研究科, 講師 (20578968)
柿坂 庸介 東北大学, 大学病院, 講師 (90400324)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | トンネル磁気抵抗素子 / 脳磁図 / てんかん / 脳機能マッピング / 高周波振動 |
研究実績の概要 |
トンネル磁気抵抗素子(TMR)を用いたまったく新しい磁気センサを用いて健常被験者における生体計測を行い、(1)心磁図計測においては平均加算の手法を用いることなく、単発での心磁図QRS波形を計測することに世界で初めて成功し、(2)脳磁図計測においては、4個のセンサをブリッジ回路に組んでノイズ対策を行い、さらには脳波の同時計測による平均加算の手法を用いて、覚醒閉眼時の脳アルファ波をTMRセンサとしては世界で初めて計測することに成功した。これは本研究におけるもっとも重要なゴールのひとつであり、最終年度を前にして達したことは大変に意義深い。 また従来の超伝導量子干渉素子を用いた脳磁図計測においても、聴覚誘発磁界やてんかん活動の記録において、脳機能研究および臨床てんかん研究における新知見を得る事ができた。とくに、言葉を理解する際に単なる聴覚だけでなく、視覚として口唇の動きを読むことによって言語理解が促進されることが従来より知られていたが、今回、ヒトが音を出すときの聴覚と視覚の情報を処理しつつ聴覚誘発磁界を計測したところ、口唇の動きを素早くキャッチした脳が、少し遅れてくる聴覚情報を処理する準備を整えていることが明らかになった。この反応には個人差が大きいことから、従来のfMRIなどを用いた検査では明らかにすることができず、脳磁図によってはじめて判明することも明らかになっている。また体性感覚誘発磁界の研究においては、口唇刺激による一次体性感覚野の反応が、加齢とともに変化していくことも明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トンネル磁気抵抗素子(TMR)を用いたまったく新しい磁気センサを用いて健常被験者における生体計測を行い、(1)心磁図計測においては平均加算の手法を用いることなく、単発での心磁図QRS波形を計測することに世界で初めて成功し、(2)脳磁図計測においては、4個のセンサをブリッジ回路に組んでノイズ対策を行い、さらには脳波の同時計測による平均加算の手法を用いて、覚醒閉眼時の脳アルファ波をTMRセンサとしては世界で初めて計測することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
トンネル磁気抵抗素子(TMR)センサを用いた脳磁図測定は、昨年度、世界に先駆けてはじめて成功したが、まだセンサ感度が理想的段階には達していないため、測定においては特性のすぐれたTMRセンサを選び出すことと、4個のセンサによるブリッジ回路を組むなどの回路上でのノイズ対策をとること、特定の周波数帯域に絞ってフィルター処理すること、さらには脳波の同時測定によって目的とする信号を平均加算することとが必要となっている。今年度は研究協力者の工学部、安藤教授のグループでのセンサ開発にさらなる進歩が期待できるため、これをただちに導入しつつ、測定できる脳磁図信号の領域を増やしていきたい。さらに、昨年度に続いて、超伝導量子干渉素子を用いた従来の脳磁図計測によっても、体性感覚誘発磁界、聴覚誘発磁界、視覚誘発磁界、言語関連脳磁界、てんかん等の自発活動の計測を継続する。このうち脳の高周波振動測定では、100~250ヘルツの高周波ガンマ帯域に着目し、脳の高次機能や、てんかん焦点の異常活動を高い空間分解能にて描出したいと考えている。この帯域は開発中のTMR脳磁計ではもっとも測定しやすい帯域であるため、従来型の超伝導量子干渉素子を用いた脳磁図での経験が、そのままTMR脳磁計の開発に活かせるというメリットがある。
|