研究課題/領域番号 |
16H05437
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮本 享 京都大学, 医学研究科, 教授 (70239440)
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研究分担者 |
高橋 淳 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (10270779)
高木 康志 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40312227)
小泉 昭夫 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (50124574)
峰晴 陽平 京都大学, 医学研究科, 助教 (50716602)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳血管障害 / もやもや病 |
研究実績の概要 |
本研究はもやもや病の病態解明と治療法の開発を目的として、①動物モデルを確立すること、②もやもや病におけるRNF213以外の遺伝因子を特定すること、③疾患の進行を抑制する治療法の開発することを課題に掲げている。 動物モデルについては、血管内皮特異的RNF213-R4810K変異トランスジェニックマウスを確立した。このEC-Tgマウスに両側総頚動脈狭窄による慢性脳虚血を加えると、野生型マウスと比較して脳表の脳血流が低下し、慢性期の血流回復も野生型よりも悪いこと、野生型にみられる慢性期の血管新生が乏しいことを明らかにした(Morimoto et al. Sci Rep, 2018)。 RNF213以外の遺伝因子については、遺伝子Xにおいて、新規の変異を特定し、現在その詳細について検討を進めている。また、RNF213変異を持たない患者に共通する遺伝子多型Yを特定し、疾患との関連について解析を進めている。一卵性双生児で表現型が異なるペアについて、全ゲノムでメチル化解析を完了させ、現在は疾患の進行に影響するエピゲノム変化を分析中である。以上の遺伝子解析により、RNF213以外の遺伝背景について解明できると考えている。その後はさらに、治療方法について検討を進める予定としている。 臨床研究では、もやもや病患者の家族のRNF213 p.R4810K多型の頻度を解析し、もやもや病患者の家族では、この遺伝子多型を持つと高頻度の頭蓋内狭窄・閉塞病変を発症する頻度が高いことを明らかにした(Matsuda et al. J Stroke Cerebrovasc Dis, 2017)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)RNF213以外の発症促進因子を特定:遺伝子Xにおいて、新規の変異を特定し、現在その詳細について検討を進めている。また、RNF213変異を持たない患者に共通する遺伝子多型Yを特定し、疾患との関連について解析を進めている。一卵性双生児で表現型が異なるペアについて、全ゲノムでメチル化解析を完了させ、現在は疾患の進行に影響するエピゲノム変化を分析中である。 (2)閉塞性脳血管障害の動物モデルの確立:血管内皮特異的RNF213-R4810K変異トランスジェニックマウス(EC-Tgマウス)を確立し、このEC-Tgマウスでは、慢性虚血に対する耐性が低いことを明らかにした。 (3)RNF213の変異あるいはRNF213以外の発症因子を打ち消すような薬剤の開発:RNF213変異陽性患者由来の多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPS) 細胞を樹立し、内皮細胞および平滑筋細胞への分化にも成功している。iPS細胞から作成した内皮細胞や平滑筋細胞の挙動の変化を指標に治療候補薬剤を特定する予定である。また、上記の動物モデルを利用して、薬剤の投与方法や至適濃度の検討などを行う。 (4)遺伝学的な変異と人における形態学的な変化の解析:現在もやもや病患者と他の頭蓋内血管狭窄患者にHigh-resolution MRIや高磁場MRIを行い、これまでに観察できなかった、脳血管の壁の厚さや性状の変化を経時的に観察している。この所見と遺伝子変異との関連を明らかにし、動物実験だけでは得られない、実際のひとでの病理学的影響を明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.遺伝:RNF213変異と第2の遺伝因子変異を導入した遺伝子改変マウスにおける頭蓋内血管病変の有無と特徴を解析する。また、このマウスより得られた血管内皮細胞、血管平滑筋細胞を培養し、その特徴について解析する。解析内容は、前年度までに行ってきた遺伝学的解析、エピジェネティックス、タンパク解析を同様の方法で施行する(小泉、高木、峰晴)。 2.薬剤開発:iPS細胞から作成した内皮細胞や平滑筋細胞の挙動の変化を指標に治療候補薬剤を特定する。それにより候補薬剤を絞り込むことができれば、動物モデルにおいて、実際に効果があるかどうかを検証する。また、薬剤の投与経路、投与量、投与期間についての検討を行う(高木、峰晴)。 3.iPS:樹立したiPS細胞を用いてDNA methyl化のレベルについて、Genomewide Bisulfite sequencingとComprehensive high-throughput array-based relative methylation (CHARM) array analysis、Histoneの修飾についてはChip-Sequencing、 noncoding RNA については、total RNAを用いてGenomewideの発現解析を行う(小泉)。樹立されたiPS細胞の中で、代表的なepigenetic 状態を表すクローンについて種々の条件下で応答の観察を行う。これらの条件については、高サイトカイン、高TGF-beta、Hypoxia、DNA損傷を予定している(高橋、高木)。 4.臨床:RNF213、第2の遺伝因子、環境要因、画像所見を統合し、統計解析により相互の関係性を明らかにする。臨床のdecision makingにおいて、影響を及ぼす因子を明らかにし、今後、前向き研究で臨床上の有用性の検証へつなげる(宮本)。
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