研究課題
中枢神経系原発悪性リンパ腫の腫瘍組織のエクソーム解析とトランスクリプトーム解析から、遺伝子変異のLandscapeを明らかにした。変異遺伝子、トランスクリプトーム、メチル化の各プロファイルと患者生存期間および治療反応性との相関の検討から、バイオマーカー、新規の分子標的薬開発のための標的分子の探索を進める。さらに、MTX耐性細胞株の樹立を行い、薬剤耐性を克服する治療法の開発を目指す。さらに、分子標的創薬・育薬、免疫療法の開発を進め個別化治療の確立を目指す。中枢神経系原発悪性リンパ腫は組織サンプルの収集の困難さから、我々のようなゲノム解析を基盤とした研究を行っている施設は国際的にも見られず、研究の新規制・独自性が期待できる。以下に明らかになった遺伝子変異の概要を示す。(1)PCNSLは1症例あたり平均172個のnon-synononymous遺伝子変異を有し、全身性ABC-type DLBCLに似たパターンであるが、より均質的な遺伝子異常を示した。(2)ほとんどのPCNSL はNF-kB/Toll-like receptor(TLR)/BCR activityに関連する遺伝子変異、コピー数異常を有していた。(3)多くのPCNSL に免疫系の遺伝子異常が認められた。(4)histone/chromatin制御に関連する遺伝子変異、B細胞分化に関連す遺伝子変異、G protein/RHO signalingに関連する遺伝子変異を認めた。(5)細胞増殖・細胞死・B細胞分化に関与する遺伝子にnon-immunoglobulin gene somatic hypermutations (SHMs)を認めた。
2: おおむね順調に進展している
脳リンパ腫の90例のエクソーム解析、30例のRNA seq解析、15例の全ゲノム解析が終了し、スーパーコンピューターを用いた解析も順調に進行している。1)遺伝子変異と生存期間との関連、2) 融合遺伝子候補などの解析を進めており、ある程度の候補遺伝子をしぼりつつある。一方で、脳リンパ腫の細胞株を用いて、MTX耐性細胞株を樹立し、メタボローム解析により耐性による代謝系の変化を検討中である。また、脳リンパ腫のMTX耐性細胞株で糖鎖構造の変化を高速液体クロマトグラフィ―を用いた解析から進めている。、
1) 患者生存期間と関連する遺伝子変異を統計学的解析から明らかにし、細胞株やマウスモデルを用いた解析も進める。2) 融合遺伝子候補を細胞株やマウスモデルを用いた解析も進める。3) RNA seqの結果からcodingおよびnon-coding RNAと生存期間との関連についても統計学的手法から解析を進め、候補遺伝子を絞り込み、細胞株やマウスモデルを用いた解析も進める。4) 網羅的エピゲノム解析も進め、生存期間と関連するプロファイルを検討する。5) 脳リンパ腫のMTX耐性細胞株の解析から耐性を克服する治療法の開発に向けた研究を進める。6) PCNSLに対するNF-kB の抑制、抗腫瘍効果をin vitro, in vivoの系を用いて検証し、臨床試験を視野に入れた検討を行う。有望な化合物に対しては、腫瘍細胞選択性と抗腫瘍効果の増強を目的に、新たな誘導体の開発に向けた研究も行う。
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