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2018 年度 実績報告書

中枢神経系悪性リンパ腫に特異的な遺伝子異常の機能解析と新規分子標的治療の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16H05442
研究機関杏林大学

研究代表者

永根 基雄  杏林大学, 医学部, 教授 (60327468)

研究分担者 市村 幸一  国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40231146)
富山 新太  防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 脳神経外科, 講師 (40385810)
中村 大志  横浜市立大学, 医学部, 助教 (60771615)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード中枢神経系悪性リンパ腫 / PIM1 / BAD / 部位特異的変異導入法
研究実績の概要

我々のグループの先行研究で報告した、中枢神経系に原発する悪性リンパ腫(Primary Central Nervous System Lymphoma; PCNSL)において全身性悪性リンパ腫と比較して高頻度の変異が認められた遺伝子のうち、特にPCNSLで高頻度 (全身性悪性リンパ腫で10-30%の頻度であるのに対しPCNSLで100%)であった癌原遺伝子PIM1の変異がPCNSLの腫瘍原性においてどのような役割を果たしているのかを解明し、PCNSLに対する新規分子標的治療法を開発する事を目標として研究を開始した。2016年(初年度)は、まず臨床で特に繰り返し高頻度に認められたPIM1遺伝子変異の機能解析を開始し、それらのうち、一部については活性型変異である可能性が示唆された。2017年度、および2018年度はこれらの活性型変異が疑われたPIM1変異につき更なる機能解析ならびに発がんメカニズムへの関与についての検討を行い、今回検討を行った活性型変異体ではPim-1の局在変化を通じて細胞死抑制がもたらされる可能性が示唆された。
さらに、中枢神経系に原発した悪性リンパ腫が全身へ転移した場合、逆に全身性のびまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)が中枢神経系に転移再発した場合、それぞれの病巣における遺伝子変異のプロファイルにどのような変異が生じているかを知ることにより、同じDLBCLである中枢神経系と全身他臓器の腫瘍の発生と進展に関する知見が得られる可能性があり、本研究のコンセプトの一部として当科における標本と、共同研究施設である横浜市立大学での症例の標本を収集し、パネル解析を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PIM1遺伝子変異の腫瘍原性について評価するため、特に臨床サンプルで高頻度に認められたPIM1変異体を作製しHeLa細胞株に導入、シグナル下流の評価としてPim-1の既知の基質であるBAD (Bcl-2 associated death promoter) のPim-1によるリン酸化をウエスタンブロットで評価した。その結果、特にK115N変異体を導入した細胞で野生型と比較してBADのリン酸化の亢進を認めた。更にK115N変異が細胞死誘導にもたらす影響を検討するため、GFP-タグ付き野生型PIM1およびK115N変異体をそれぞれBADを内在性に発現するヒト神経芽細胞腫細胞株であるNagai細胞に導入し、血清除去下でのカンプトテシン処理による細胞死誘導をGFP陽性細胞の死細胞染色で評価を行ったところ、PIM-1野生型と比較してK115N変異体発現細胞で細胞死誘導の抑制を認めた。また、PIM-1野生型およびK115N変異体におけるPIM-1の細胞内局在を評価するため、PIM1野生型ならびにK115N変異体を導入したHeLa細胞で免疫染色法ならびに細胞分画法による検討を行ったところ、K115N変異体で野生型と比較してPim-1の細胞質分画の上昇を認めた。更にK115N変異体ではPim-1のバンドの上方偏位が認められたため、バンドの上方偏移に関与する翻訳後修飾について検討した結果、K115N変異体では糖鎖阻害剤である2-デオキシ-D-グルコースの投与によってバンドの上方偏移の解除が認められ、更に糖鎖阻害剤であるツニカマイシンの投与によってK115N変異体でPim-1の細胞質局在の低下を認め、K115N変異体において糖鎖付加がPim-1の細胞質局在に関わっている可能性が示唆された。
中枢神経系と全身でのDLBCL病巣間の変異解析は現在進行中で、特異的な変異を検出した。

今後の研究の推進方策

PIM-1変異体による細胞死の抑制がBADのリン酸化に依存しているものかどうかを、野生型PIM1ならびにK115N変異体を導入した細胞株で、BADのsiRNAによるノックダウン、BADの細胞死誘導に対する優勢変異体の導入、もしくはPIM阻害剤を用いた検討等で行う予定である。更に、ヒトDiffuse Large B cell lymphoma培養細胞株もしくはヒトPCNSL培養細胞株に対して既に作成済のウイルスベクターを用いて各PIM1変異体の導入を行い、一連の実験結果が再現可能かどうか検証を行う予定である。
中枢神経系と全身でのDLBCL病巣間の変異解析を継続し、特徴ある変異のプロファイルを探索する。また中枢神経系へのホーミングに関与する可能性が示唆される変異が検出されれば、細胞内での機能解析を計画する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Hepatosplenic gamma-delta T cell lymphoma involving the brain2018

    • 著者名/発表者名
      Iijima S, Chiba T, Maruyama K, Saito K, Kobayashi K, Yamagishi Y, Shibahara J, Takayama N, Shiokawa Y, Nagane M
    • 雑誌名

      World Neurosurg

      巻: 118 ページ: 139-142

    • DOI

      10.1016/j.wneu.2018.07.048

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 中枢神経系悪性リンパ腫の治療開発-多剤併用薬物療法及び新規分子標的治療薬2018

    • 著者名/発表者名
      永根基雄
    • 雑誌名

      最新医学

      巻: 73 ページ: 1441-1449

  • [学会発表] Therapeutic development for malignant brain tumors: past and future perspectives2018

    • 著者名/発表者名
      Motoo Nagane
    • 学会等名
      The 36th Annual Meeting of the Japan Society of Brain Tumor Pathology
    • 招待講演
  • [学会発表] Clinical trials for gliomas and primary central nervous system lymphoma in Japan by JCOG Brain Tumor Study Group2018

    • 著者名/発表者名
      Motoo Nagane
    • 学会等名
      The 15th Meeting of the Asian Society for Neuro-Oncology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 中枢神経系原発悪性リンパに対するR-MPV-A療法の後方視的解析2018

    • 著者名/発表者名
      永根 基雄
    • 学会等名
      第30回 多摩脳腫瘍研究会
  • [学会発表] 中枢神経系原発悪性リンパ腫に対するR-MPV-A療法のHD-MTX単独療法に対する優越性2018

    • 著者名/発表者名
      永根 基雄
    • 学会等名
      第36回 日本脳腫瘍学会学術集会
  • [学会発表] 高齢者初発中枢神経系原発悪性リンパ腫に対する多剤併用免疫化学療法(R-MPV-A)の有用性2018

    • 著者名/発表者名
      永根 基雄
    • 学会等名
      第32回日本老年脳神経外科学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Mutation of PIM1 gene in Primary Central Nervous System Lymphoma inhibits cell death through change in subcellular localization of Pim-1 and increase of BAD phosphorylation2018

    • 著者名/発表者名
      佐々木重嘉、市村幸一、永根基雄、富山新太
    • 学会等名
      The 23rd Annual Scientific Meeting of the Society of Neuro-Oncology
    • 国際学会
  • [学会発表] 中枢神経系悪性リンパ腫におけるPIM1遺伝子変異はPim-1細胞内局在の変化およびBADリン酸化の亢進を介して細胞死を抑制する2018

    • 著者名/発表者名
      佐々木重嘉、市村幸一、永根基雄、富山新太
    • 学会等名
      第36回 日本脳腫瘍学会学術集会

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公開日: 2019-12-27  

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