研究課題
我々は、これまでヒト骨髄間葉系幹細胞(MSCs)がマイクログリアおよびマクロファージ(MG/MP)の活性化を修飾し脳虚血などの神経損傷を抑制することを示唆してきた。当該研究は脳虚血モデル中心に用い、①脳内に移植したMSCs がどのような応答をするのか②その応答はMG/MP の活性を修飾するか③活性化されたMG/MP は神経細胞死の抑制に関与するのか④MSCs-MG/MP パスウェイが神経機能の再生に関与するかを明らかにするために行う。我々は培養hMSCsに前脳虚血を施したマウスの海馬ホモジネートと偽手術群のマウスの海馬ホモジネートを暴露した際に2倍以上に増加する98 個の候補遺伝子を遺伝子網羅的解析ですでに見出している。Gene ontology解析で特に注目されたhMSCsより発現するケモカイン・サイトカインがどのような機構により増加するかを調べた。ccl2遺伝子は虚血した脳の海馬(虚血性神経細胞死を起こす領域)の暴露により増加するが同動物の大脳皮質(虚血となるがあまり神経細胞死を起こさない領域)や小脳(虚血状態にならない領域)のホモジネートでは増加しなかった。そこで、神経細胞死に関わる炎症性サイトカインのIL-1βやTNFαを培養hMSCsに暴露したところ培地中のCCL2および細胞の遺伝子発現が増加した。Ex vivoにおけるhMSCsからのccl2の産生をIL-1α/βまたはTNFαの遺伝子欠損マウスで行ったところ、野生型マウスのホモジネートに認められたCCL2の増加は抑制された。この結果、hMSCsは脳虚血性神経細胞死に関わるシグナルにより応答し、CCL2の産生を増加することが明らかとなった。今後、hMSCsが産生するCCL2やほかの因子がMG/MPの活性化もしくは活性化型に影響を与えるか神経細胞死を修飾できるか調べていく。
2: おおむね順調に進展している
本年度は主に脳内に移植されたhMSCsがどのような刺激により様々な因子を産生するのか明らかにした。次にhMSCsから産生された因子が脳内でどのような影響を与えるのか明らかにしていく。
本年度の解析により、hMSCsは脳虚血性神経細胞死に関わるシグナルにより応答し、CCL2の産生を増加することが明らかとなった。今後、hMSCsが産生するCCL2やほかの因子がMG/MPの活性化もしくは活性化型に影響を与えるか神経細胞死を修飾できるか調べていく。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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