研究課題
細胞膜に存在するスフィンゴ糖脂質(glycosphingolipids、以下GSLs)は、効率的に細胞膜上のシグナル伝達を行うためのラフト(rafts)と呼ばれる微小領域を膜上に形成する。これにより、増殖、分化、活性化等の細胞機能を調節している。申請者は、軟骨細胞上のGSLs機能の低下が軟骨変性を惹起し、変形性関節症(osteoarthritis、以下OA)の病態に深く関与している可能性を示してきた。本研究の最終ゴールは、OA発症に関わる軟骨細胞上GSLsの分子基盤の解明と治療への応用を目指すことである。平成28年度-平成30年度において以下の成果を得た。1)各種のGSLs関連合成酵素遺伝子ノックアウトマウス(KOマウス)を用いてIL-1刺激に対する各GSLs分子のシグナル制御機能を解析した。得られた成果より、GSLs生合成経路の上流から下流に存在する主要な各GSLs分子が、OA発症に関わるIL-1シグナル制御機能を有することが明らかとなった。マウスOAモデルを用いた解析においては、より上流に存在するGSLs分子をKOする(軟骨細胞中のGSLs含有量をより減少させる)と重度のOAが発症することが明らかとなった。2)軟骨細胞に対するメカニカル刺激に対し、GSLs分子はCaチャンネルを介して細胞内への刺激伝達を制御する機能を有することを証明した。3)ヒト軟骨組織中のGSLs分子の網羅的構造解析の手法を確立し、実際の解析を進行している4)OAに対するGSLs関連分子の関節内投与による治療効果を判定するためのウサギ疾患モデルを確立させ、投与の結果、肉眼的・組織学的に有意な治療効果が得られることを証明した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Osteoarthritis and Cartilage
巻: 27 ページ: 314-325
10.1016/j.joca.2018.11.003.