研究課題
RANKL逆シグナル経路は、Runx2の活性化をトリガーすることで骨芽細胞の初期分化を加速し、カップリングを媒介するシグナル機構の一部を構成する可能性を、申請者らが新規に見出した。一方、Wntシグナル経路は骨芽細胞の分化過程における重要性が示唆されているものの、Wnt分子およびFzd分子の多様性も相俟って、その全体像は未だ明らかとはなっていない。そこで本研究においては、生理的な骨芽細胞分化の各段階において、骨芽細胞の分化制御に特に関与するWnt-Fzdの組み合わせを、網羅的なアッセイを行って同定し、その後、RANKL逆シグナルとどのようにクロストークして、骨芽細胞の分化過程全体を制御しているのか、その全体像の解明を目標としている。前年度までの検討によって、CMVプロモーター転写活性がWntシグナル経路によって大きく影響を受けることが判明したため、適切なプロモータをスクリーニングし、UbCプロモータとイントロン配列を組み合わせたコンストラクトに変更した。新規コンストラクトでWnt下流経路の網羅的活性化パターンを再取得した。Ca2+経路とcAMP経路の活性化は基本的に逆相関し、Fzdに対してGiの共役が示唆されたが、Fzd8に関しては相関から外れており共役するGタンパク質が異なると推定された。またshRNAを用いた遺伝子ノックダウン手法を用いて、RANKL逆シグナル経路とのクロストーク解析を進めたが、遺伝子発現抑制の効果が弱い、あるいは他の分子種による代償反応などで、変化がマスクされるケースが散見されたため、Cas9-CRISPRの手法を用いてFzd1-10全ての遺伝子を同時に破壊した細胞株の取得を行なった。今後、樹立した細胞株を用いてRANKL逆シグナル経路とWn-Fzdシグナル経路のクロストークの詳細な解明を行うと共に、in vivoレベルでの解析も進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
Fzdには基本的にGiが共役する一方でFzd8のみ異なるGタンパク質が共役する可能性がある、など複数の新規知見が得られており、またクロストーク解析をより高精細に実施するためのツールも整った。
前年度からの検討を継続し、RANKL逆シグナル経路とWn-Fzdシグナル経路のクロストークの詳細な解明を目指す。また、Wnt分子に対する中和抗体の取得を継続すると共に、Wntに対する中和に利用するためのバックアップとして、FzdのN末端側のCRDを抗体IgG1 Fcドメインとの融合タンパク質としたコンストラクトを作成する。中和分子が取得でき次第、RANKL逆シグナルを抑制したRANKL P29A変異マウスおよび野生型同腹仔に対する投与実験を行なって骨表現型を解析し、生体レベルで両シグナル経路のクロストークを解析する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Biochem Biophys Res Commun
巻: 509(2) ページ: 435-440
10.1016/j.bbrc.2018.12.093
Nature
巻: 561(7722) ページ: 195-200
10.1038/s41586-018-0482-7
ライフサイエンス新着論文レビュー
巻: - ページ: -
10.7875/first.author.2018.095
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/press_archives/20180906.html