研究課題/領域番号 |
16H05448
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
中 紀文 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 整形外科主任部長 (90601964)
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研究分担者 |
竹中 聡 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (00588379)
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263261)
濱田 健一郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50649043)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 理事・副学長 (60191558)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肉腫 / バイオリソース / 希少がん / 細胞株 / 前臨床試験 |
研究実績の概要 |
平成29年度は8例の患者検体を用いて細胞株の樹立作業を行い,in vitroで安定的に増殖する細胞株を3株,このうちin vivoでも継続的な腫瘤形成を示すことを確認できたものを2株得た(clear cell sarcoma 淡明細胞肉腫とdedifferentiated liposarcoma 脱分化型脂肪肉腫).いずれの細胞株もヌードマウス皮下注にて急速に増大する腫瘤を形成することが可能である. 淡明細胞肉腫はメラノサイトへの分化を示す悪性軟部腫瘍である.疾患特異的な染色体転座と融合遺伝子EWS-ATF1を有しており,EWS-ATF1の下流にあるMITFがメラノサイトへの分化を調節していると考えられている.先行実験で,MITFを分子レベルで制御しがん細胞の分化を変化させうることが判明した.今後本細胞株が新たな分化療法の開発に有用な研究材料になりうるものと期待される. 新たに樹立された脱分化型脂肪肉腫細胞株は,検体を採取した患者の臨床経過を反映し,移植されたマウスに重度のSarcopenia(骨格筋減少症)とCachexia(悪液質)を発症させた.Sarcopenia は主に加齢に伴う骨格筋筋肉量の減少を,Cachexiaは栄養失調による衰弱状態を意味するが,Sarcopenia やCachexiaが年齢や栄養補給状態と無関係に悪性骨軟部腫瘍患者にしばしば発生することが知られている.両者の病態は患者の予後やQOLを悪化させうるが,その発症機構はいまだ不明な点が少なくない.本細胞株は,極めて予後不良の脱分化型脂肪肉腫に対する新規治療法開発とともに,CachexiaやSarcopeniaの病態解明のための強力な研究ツールとなることが大いに期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の異動による研究環境の変化に伴い,細胞株樹立作業に減速が生じた.異動先の大阪国際がんセンターにおける研究環境のセットアップに約半年要したが,ようやく整備を終え,細胞株樹立と動物モデル作成作業が再開された.大阪国際がんセンターはわが国有数の肉腫治療症例数を誇っており,今後試行症例数ならびに樹立成功例数の増加が期待される. In vitro, in vivoですでに安定的に維持可能となった細胞株から順に生物学的機能解析を行っている.また,新規に樹立された淡明細胞肉腫細胞株や脱分化型脂肪肉腫細胞株に,臨床試験で本疾患に有効とされる新規抗がん剤を投与し,その作用機序をin vitro, in vivoで検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
細胞株の作製過程をさらに加速するために,協力施設での患者検体採取の機会を増やしてゆく.また,順次樹立された細胞株において生物学的機能解析を進め,治療標的分子の同定と治療法開発に向けた候補薬剤選定作業を行う.さらにゼノグラフトモデルと転移巣再現モデルの作製に取り組む. メラノサイトへの分化が途中で停止した状態にある淡明細胞肉腫は,分化状態が正負両方向に可変性であるため種々の分化実験に有用であり,今後,分化調節薬の選択やがん細胞における分化機構の解明に役立つものと考えられる. また,Cachexiaの病態を再現する新規脱分化型脂肪肉腫細胞株は,がん患者のみならずagingにより発生するSarcopeniaの病態解明につながる可能性を秘めている.SarcopeniaやCachexiaを発症させる他の肉腫細胞株の樹立にも取り組み,SarcopeniaとCachexiaの詳細な病態解明研究へ展開してゆきたい.
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