研究課題
関節軟骨損傷部に自家軟骨細胞シートを移植することにより、硝子軟骨での再生/修復が促進することが確認されており、同種軟骨細胞シートを移植する臨床研究が進められている。軟骨細胞シートの軟骨修復メカニズムとして、軟骨細胞シートから産生される軟骨同化作用を持つ因子の産生が骨髄由来幹細胞の軟骨分化促進に寄与していると推定されているが、詳細は解明されていない。細胞シートの軟骨修復メカニズムを明らかにすることは、同種細胞シートに求められる機能の本質を明らかにすることであり、細胞シートを再生医療等製品として開発する場合には必須の情報である。同時に、自然には修復しないといわれている関節軟骨の再生に有用な因子の同定につながる可能性がある。本研究では、軟骨修復作用が認められている成人膝軟骨細胞シートが分泌する因子の網羅的な解析を行い、硝子軟骨再生メカニズムに寄与する新たな因子の探索を行う。本年度は、異種同所性移植モデルによる軟骨修復作用の評価を実施し、軟骨修復作用に優劣が認められた軟骨細胞シート(人工関節置換術廃棄組織由来軟骨細胞、多指症由来軟骨細胞等から作製した細胞シート)の培養上清を12例分収集し、アプタマー法による網羅的解析(Somascan)により1129種のタンパク質の相対量を測定した。これらの細胞シートの軟骨損傷修復作用データとSOMAscanから得られた上清中因子量の相関解析を実施中である。また、上清中のExosome内miRNAのマイクロアレイ解析を実施し、軟骨損傷修復作用の異なるグループ間で変動するmiRNAの抽出を終了した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の計画であった、軟骨修復作用に優劣が認められた軟骨細胞シート(人工関節置換術廃棄組織由来軟骨細胞、多指症由来軟骨細胞等から作製した細胞シート)の培養上清の収集が終了し、Somascanによるタンパク質測定と上清中因子量の相関解析まで実施できており、また上清中のExosome内miRNAのマイクロアレイ解析から、軟骨損傷修復作用の異なるグループ間で変動するmiRNAの抽出も予定通り終了しているため。
軟骨修復作用との相関解析の結果から、論文情報やGO解析、Pathway解析により軟骨修復の促進が期待できる因子の絞りこみを行う。硝子軟骨再生作用への寄与が推定された因子について、成人膝軟骨細胞シートからの産生をELISA法等により確認する。また、miRNAについては、RT-PCR法によりExosome内miRNAの存在を確認する。細胞シートからの産生が確認できた因子について、軟骨修復機序を裏付ける解析に進める。すなわち、これまでに軟骨保護作用や軟骨栄養因子としての作用の報告がない因子については、in vitroにおける軟骨分化誘導や軟骨同化作用の有無を解析し、軟骨修復作用への寄与を明らかにする。また、既報より直接投与による効果が期待できる因子については、家兎変形性関節症モデルへの関節内投与による修復作用の評価を検討する。
すべて 2016
すべて 学会発表 (2件)