研究課題/領域番号 |
16H05455
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
佐藤 正人 東海大学, 医学部, 教授 (10056335)
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研究分担者 |
豊田 恵利子 東海大学, 医学部, 特定研究員 (90749269)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タンパク質 / miRNA / マイクロアレイ解析 / 細胞シート |
研究実績の概要 |
関節軟骨損傷部に自家軟骨細胞シートを移植することにより、硝子軟骨での再生/修復が促進することが確認されており、現在同種軟骨細胞シートを移植する臨床研究が進められている。軟骨細胞シートの軟骨修復メカニズムとして、軟骨細胞シートから産生される軟骨同化作用を持つ因子の産生が骨髄由来幹細胞の軟骨分化促進に寄与していると推定されている。細胞シートの軟骨修復メカニズムを明らかにすることは、自然には修復しないといわれている関節軟骨の再生に有用な因子の同定につながる可能性がある。本研究では、軟骨修復作用が認められている成人膝軟骨細胞シートが分泌する因子の網羅的な解析を行い、硝子軟骨再生メカニズムに寄与する新たな因子の探索を行っている。 昨年度実施した、異種同所性移植モデルによる軟骨修復作用の評価で、軟骨修復作用に優劣が認められた軟骨細胞シートの培養上清(12例分)について、アプタマー法によるタンパク質解析(Somascan)を実施し、1129種のタンパク質の相対量を解析した。軟骨修復作用の認められた細胞シートで高いシグナルを示すタンパク質を抽出し、骨軟骨発生関連因子とされる6因子を含む26因子に関連性が示唆された。これらの中から軟骨関連因子として知られている因子は、ELISA法により上清中への産生量を確認した。 同様に軟骨修復作用を認めた細胞シートのエクソソームに特徴的な13種のmiRNAを抽出した。これらのmiRNAの標的遺伝子をin silicoで予測したところ、カドヘリンシグナル経路とWntシグナル経路の遺伝子が多く含まれ、これらの経路を修飾する可能性のあるmiRNAが細胞シートの分泌するエクソソーム中に存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アプタマーアレイ結果より有効性への関与が示唆される因子を同定し、一部因子についてはELISAによる確認が終了した。既知の軟骨関連因子も含まれることからも、未知の因子についても関連するものであることが示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
軟骨修復作用との相関解析の結果から絞りこんだ因子について、引き続きELISAまたはプロテインアレイによる定量によりSOMAscanによる解析結果の検証を行い、有効性との相関が得られる因子を同定する。 軟骨再生作用に相関が認められた既知の液性因子について、軟骨損傷/軟骨再生評価モデル系において、関節内投与や阻害物質、中和抗体等をもちいて、硝子軟骨再生作用を検討する。軟骨再生作用への関与が不明な因子については、in vitroにおける軟骨分化誘導や軟骨同化作用の有無を間葉系幹細胞の軟骨分化誘導系や、軟骨様細胞株のシグナル応答系を用いて検討する。エクソソーム含有miRNAについては、RT-PCRによるバリデーションを実施して絞り込みを行い、細胞シートの有効性と関連を示すmiRNAの同定を行う。
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