研究課題
凍結ヒト同種細胞移植の検討を行った。【方法】ビーグル成犬(1~4歳齢の雌、n=10、重量約10kg)を使用し、L3/4-L6/7にイメージ下で椎間板穿刺を行い髄核組織吸引にて変性椎間板モデルを作製した。L3/4-5/6に注入移植を2週間後に行い、移植後はtacrolimus 0.15mg/kgを投与した。直前解凍したdiscogenic cells(Frozen群)、2週間の前培養を行ったdiscogenic cells(Cultured群)、PBSのみ(Sham群)の3郡に分け移植した。また、移植する細胞数は10万個(Low dose群)と100万個(High dose群)とし個体毎に分け、両群ともn=5とした。X線で椎間板高を4週毎に評価し、穿刺前との割合を比較した。移植12週後で組織学的評価(HE染色、Saflanin O染色)行い、Bergknutスコアにて評価した。【結果】椎間板高は、Frozen-Low群 86.6-91.1-87.4-89.3%(0-4-8-12週後)、Cultured-Low群88.9-86.2-83.9-84.7%、Frozen-High群84.9-86.8-84.6-84.5%、Cultured-High群83.7-82.4-81.1-81.7%、Sham群 85.6-85.2-80.9-78.1%であった。12週の時点でsham群とfrozen-Low群の間で有意差を認めた。組織学的評価は、Frozen-Low群3.8、Cultured-Low群8.6、Frozen-High群5.4、Cultured-High群4.8、sham群10.1であった。sham群とFrozen-High群、Cultured-High群、Frozen-Low群の間で有意差を認めた。【考察および結論】Frozen-Low群は椎間板高、組織学的評価ともに有意な改善を認めた。sham群は経時的な椎間板高の減少を認めたが、移植した4群では移植後の減少は認めなかった。このことから、椎間板変性の進行の抑制や椎間板再生に寄与している可能性が考えられた。一般的に移植に用いる凍結細胞はpre-cultureを行うが今回の髄核細胞移植においてはFrozen群で同等以上の結果が得られた。低酸素・低栄養で生存しているという髄核細胞の特異性によるものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
同時進行ですべての計画が進行中。
椎間板細胞へ分化のための細胞源、培養方法等は確立されていない。そのため今回の研究では間葉系幹細胞から髄核様細胞を誘導し、髄核誘導培地の確立、細胞移植療法へ発展させることを目的とする。方法:間葉系幹細胞(MSC)を用いる。MSC分化のために5万個の細胞を5分間遠心分離し、10%FBSを添加したDMEMの存在下で、37℃、21%O2で48時間培養する。48時間後、6well plateに細胞を分配し、培地はBM+TGF-β1(10ng/ml)+GDF5(100ng/ml)+DEXとする。さらに3wellずつそれぞれWnt3a(250ng/ml)、5a(125ng/ml)、5b()、Shh(100ng/ml)、FGF2(1ng/ml)、positive controlとしてNPを加える。またWnt3a(250ng/ml)、5a(125ng/ml)、5b()、Shh(100ng/ml)すべてを加えたものも作成する。NP細胞の単離は、ヒアルロニダーゼ(0.05%)により37℃で15分間、次いでトリプシン(0.2%)により30分間、Ⅱ型コラゲナーゼ(0.2%)で1時間、酵素消化する。6well plateとは別にMSCペレットを作成しそれぞれWnt3a(250ng/ml)、5a(125ng/ml)、Shh(100ng/ml)、FGF2(1ng/ml)、positive controlとしてNP、no factorを加える。negative controlとしてMSC+培地のみのwellとペレットを作成する。分化は37℃、5%O2で行う。評価方法:Day0、7、14、21でペレット培養はサフラニンO染色、6well plate培養はPCRを行う。プライマーはACAN、T、COL2A1、COL1A2、HIF-1α、GAPDH、SOX9、PAX1を使用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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