研究課題/領域番号 |
16H05462
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
市川 智彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20241953)
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研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
坂本 信一 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (70422235)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 癌抑制 / 転移抑制 / 去勢抵抗性 / マイクロRNA / 泌尿器癌 |
研究実績の概要 |
前立腺癌組織を用いたマイクロRNA発現プロファイルにおいて発現抑制されているmiR-452を同定し機能解析を行った。アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞に核酸導入した結果、癌細胞の遊走・浸潤を顕著に抑制する事を見出した。この事から、miR-452は癌抑制機能を有する事が判明した。また、臨床検体の解析でmiR-452の発現抑制が去勢抵抗性となるまでの期間を予測する因子となることを示した。miR-452の標的分子としてWWP1遺伝子を同定した。この標的分子は癌細胞の浸潤・遊走を促進する癌遺伝子機能を有しており、臨床検体において発現が更新していることを示した。これらの結果について、Br J Cancerに論文発表した。新規に作成した去勢抵抗性前立腺癌組織を用いたマイクロRNA発現プロファイルを解析し、発現抑制を認めたmiR-320aについて機能解析を行った。その結果、癌細胞の浸潤を抑制する癌抑制型マイクロRNAである事を示した。miR-320aが制御する分子として、LAMP1遺伝子を同定し、この分子が前立腺癌組織において過剰に発現していることを明らかにし、Int J Oncolに論文発表した。前立腺癌組織において著明に発現抑制されている6つのマイクロRNA(miR-26a, miR-26b, miR-29a, miR-29b, miR-29c and miR-218)についてさらに解析した。これらが共通して制御し前立腺癌の転移を促進する35の候補遺伝子を同定した。この中でLOXL2遺伝子が前立腺癌で過剰発現している事や、発現を抑制することにより前立腺癌細胞の浸潤・遊走を抑制することを明らかにした。マイクロRNAのネットワークの解明につながるものとしてJ Hum Genetに論文発表した。その他の泌尿器癌においてもマイクロRNAに関する解析を行い英文誌に論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にも示したとおり、前立腺癌組織や去勢抵抗性前立腺癌組織において発現が低下しているマイクロRNAの中から、miR-452、miR-320aを癌抑制型マイクロRNAとして同定した。さらに、それぞれのマイクロRNAが標的とするWWP1遺伝子ならびにLAMP1遺伝子を同定し、癌遺伝子機能を有する事を証明した。これらの新知見を、それぞれBr J CancerならびにInt J Oncolに論文発表することができた。また、6つのマイクロRNA(miR-26a, miR-26b, miR-29a, miR-29b, miR-29c and miR-218)が共通して制御するLOXL2遺伝子について解析し、マイクロRNAのネットワークを解明するための新知見として、その成果をJ Hum Genetに論文発表した。その他の泌尿器癌においてもマイクロRNAに関する解析を行い英文誌に論文発表することにより、マイクロRNAによる癌制御の解明に向けて、研究を進めることができた。 研究期間の1年目でこれらの成果を達成していることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
CRPC剖検検体の癌部で発現が抑制されているマイクロRNAに着目し、癌細胞株(PC3/PC3M/DU145)にマイクロRNAを核酸導入し、細胞の増殖能・遊走能・浸潤能について、癌抑制効果があるか、検討を行う。癌細胞の増殖を抑制、あるいはアポトーシスを誘導するマイクロRNAを「増殖抑制型マイクロRNA」、癌細胞の遊走能・浸潤能を抑制するマイクロRNAを、「転移抑制型マイクロRNA」の候補として機能分類する。機能分類できた「癌抑制型マイクロRNA」については、順次、マイクロRNAが制御する分子経路の探索を開始する。続いて、①マイクロRNA導入細胞の網羅的な発現解析(マイクロアレイ解析)、②マイクロRNAデータベースの活用(miRBase;TargetSCan)、③臨床検体の発現情報(Gene Expression Omnibus)を組み合わせる事で、マイクロRNAが制御するタンパクコード遺伝子の効率的に探索する。また、マイクロRNAが制御する膨大な遺伝子群を、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)に当てはめて機能分析する事で、マイクロRNAが制御する分子経路を効率よく探索する。これらの計画が順調に進んだ場合は、CRPCで活性化している分子経路を遮断する戦略を考案し、まずin vitroにおける検証を行う。活性化シグナルの起点が細胞表面の受容体であれば、現在、臨床で使用されている分子標的薬を組み合わせた治療が考えられる。また、細胞増殖シグナル受容体やECM受容体(インテグリン)の阻害剤に関しては、上市前の抗体薬や低分子化合物が多数報告されている。入手可能な抗体薬や低分子化合物についても同様に研究対象として、その有効性について確認する。
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