転移性腎細胞癌においてスニチニブは最も一般的な一次分子標的薬であるが、スニチニブ耐性の分子機構は曖昧なままである。本研究ではスニチニブ耐性腎細胞癌におけるマイクロRNA発現プロファイルにおいて発現低下を認めたmiR-99a-3pに着目し、miR-99a-3pを起点とするスニチニブ耐性獲得の機序と、miR-99a-3pが制御する分子ネットワークの探索を行った。 当科で樹立したスニチニブ耐性腎細胞癌細胞株(SU-R-786-o)にmiR-99a-3pを核酸導入し、細胞の増殖・細胞周期・細胞死誘導について機能解析を施行した。SU-R-786-oを用いたRNAシークエンス発現解析とin silico解析により、標的遺伝子群の探索を行った。標的遺伝子の機能解析は、siRNAを用いて行った。さらにThe Cancer Genome Atlas (TCGA) のデータベースを用いてmiR-99a-3pやその標的遺伝子の発現を解析した。miR-99a-3pは親細胞と比べSU-R-786-oにおいて発現抑制が認められた。miR-99a-3pをSU-R-786-oに核酸導入する事で、癌細胞の増殖が有意に抑制され、アポトーシスが誘導された。miR-99a-3pが制御する分子として、DNAの重合および修復に必要なデオキシヌクレオチドの合成に関与するRRM2が挙げられた。RRM2はSU-R-786-oで発現が亢進しており、siRNAを用いた機能解析から、SU-R-786-oにおいてアポトーシスを介した増殖能の抑制を認めた。また腎癌患者においてRRM2の高発現群は予後不良因子である事が示された。miR-99a-3pは、スニチニブ抵抗性腎癌細胞において癌抑制的作用を有することが示唆された。miR-99a-3pの機能解析を通じてスニチニブ耐性腎細胞癌の新規分子ネットワークの一端が明らかとなった。
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