研究課題/領域番号 |
16H05465
|
研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
小林 孝彰 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70314010)
|
研究分担者 |
岩崎 研太 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10508881)
三輪 祐子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (90572941)
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
鈴木 啓介 愛知医科大学, 医学部, 講師 (80387795)
堀見 孔星 愛知医科大学, 医学部, 助教 (30634159)
松岡 裕 愛知医科大学, 医学部, 助教 (20714869)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 移植・再生医療 / 慢性抗体関連型拒絶反応 / シグナル伝達 / マイクロアレイ / 先制医療 |
研究実績の概要 |
ドナーHLAに対する抗体(DSA)が引き起こす慢性抗体関連型拒絶反応を制御する研究である。グラフト機能傷害の前、さらにはDSAが産生される前の段階での対策、すなわち予防・先制医療の導入をめざす。H28年度に得られた研究成果は、(A) Pharmacodynamics (PD)解析に基づく免疫抑制療法の導入:T細胞をCD4, CD8サブセットに分けて解析し、ウイルス感染例ではCD8のCSA、TACの薬剤感受性が高いことを確認した。PD解析導入後の薬剤選択、投与量調整により、移植後のウイルス感染は10%以下に減少した。(B) Liquid BiopsyによるBiomarker探索:末梢血PBMC中のmiRNA解析では、DSA産生、慢性抗体関連型拒絶反応と、miR-142-5p、miR-182/486-5pの関連が認められた。mRNA解析では、CIITAがDSA産生例で正常機能例より低く、IL-10は慢性拒絶反応、DSA産生例で有意に高かった。(C) T細胞受容体(TCR), B細胞受容体(BCR)レパトア解析:TCRαV領域、βV領域、C領域のPrimerを設定し, single cell PCRによりヒト培養細胞に反応するT細胞クローンを数種類同定した。(D)末梢血メモリーB細胞培養:IL-2, R848, 96 wellプレートを用いたPBMC培養方法の改良により検出率が向上した。培養中のDSAがnonDSAよりも多量であり、末梢血ではDSAがグラフトに吸着され、B細胞培養の臨床的意義を明確にした。(E)グラフト内皮細胞のAccommodationを誘導する薬剤の探索:Prednisolone, Fluvastatinは, それぞれCIITA, HLA-DR mRNAを抑制し、EverolimusはCD63 CD82の抑制、翻訳後修飾によりHLA-DRの発現を抑制した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ順調に成果が得られており、計画は予定通り進行していると考える。(1)予防医療の実践、(2)先制医療に必要な発症前診断の開発、(3)発症前の有効な治療法の開発の3つのプロジェクトに分けて効率的に研究を進めている。(1) 予防医療の実践については、Pharmacodynamics (PD)解析を臨床に近い形で抗体産生に重要なB細胞、とくにT-B communicationを考慮した薬剤感受性テストの確立をめざす。(2)では、Liquid BiopsyによるBiomarkerの探索を行っているが、臨床でのDSA産生、慢性抗体関連型拒絶反応(subclinicalからclinical)への変化をより早く検出できるBiomarkerが不可欠である。OMICS解析だけでなく、TCR、BCRに着目した解析は、T, B細胞の早期の反応を検出できるであろう。Direct Recognition Pathway だけでなくIndirect Pathway に関わるアッセイの開発も不可欠である。(3)では、従来からの内皮細胞研究を発展させている。さらに抗体療法、RNA干渉を用いた革新的な治療法の開発につながる可能性がある。今のところ、本研究の方向性に問題はなく、最終のH30年度に向けて、効率的な研究を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を効率的に遂行するために、計画通りに3つのプロジェクト: (1)予防医療の実践、(2)先制医療に必要な発症前診断の開発、(3)発症前の有効な治療法の開発に分けて実施する。(1)(A) Pharmacodynamics解析に基づく免疫抑制療法の導入では、抗体産生に重要な役割を果たすT-B communicationを考慮したアッセイを開発する。(2)(B) Liquid BiopsyによるBiomarker探索を行った結果、DSA産生および慢性拒絶反応と関連するmiRNAが血清中とPBMCでは異なるパターンを示し、さらに詳細な解析を行う。(C) 次世代シーケンサーを用いた T細胞受容体(TCR), B細胞受容体(BCR)レパトア解析は、継続中であり、MLRにより反応したCD4、CD8のシングルセルPCRによるTCR遺伝子解析を計画する。(D) PBMCからの末梢血メモリーB細胞培養のさらなる改良により検出感度を高め、移植前のリスク判定を検討する。さらに、in vitro B細胞培養系でのステップ別に有意に変化する分子を同定し、in vivoでのBiomarkerとしての有用性を評価する。(3)(E)グラフト内皮細胞のAccommodation誘導と(F) RNA干渉では、抗体療法の開発を行う。ステロイド、スタチン、mTOR阻害剤、ABO血液型抗体の接着によるHLA-DR発現減少と補体依存性細胞傷害の軽減が確認されたため、さらに体内でもAccommodationを効率的に誘導する薬剤、条件を調べる。今年度以降は、TCR/BCR解析で得られた結果を基にして、引き続きアロ抗原に反応するT細胞クローンを同定し、RNA干渉による反応性の制御、抗イディオタイプ抗体の作成を検討する。これらのプロジェクトで得られた結果を取りまとめて学会発表、論文発表を行う予定である。
|