研究課題/領域番号 |
16H05467
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
堀口 明男 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 講師 (20286553)
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研究分担者 |
櫛引 俊宏 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (30403158)
東 隆一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (00531112)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 尿道再建 / 外傷性尿道狭窄症 / バイオマテリアル |
研究実績の概要 |
【細胞足場材料の作製】 本研究では、尿道再建に最適な細胞足場材料の形状や性状を最初に検討する必要がある。そこで、細胞親和性の高いコラーゲンを用いてスポンジまたはシート状の細胞足場材料を作製した。コラーゲンの中性水溶液を成型枠に流し込み、凍結乾燥を行いスポンジ状とした。さらに(株)アトリー社製の3次元配向性コラーゲンシート上で口腔粘膜上皮細胞を培養し、細胞足場材料としての生体適合性を検討した。その結果、豚由来type Iコラーゲンから作製した細胞足場材料上で、口腔粘膜上皮細胞は活発に増殖と遊走を行ったことから、本研究に用いる細胞足場材料としてコラーゲンを用いることは問題ないと判断した。 【口腔粘膜上皮細胞の培養】 尿道の再建を行うためには、尿道上皮を構成する上皮細胞を効率よく増殖させ、瘢痕化を防ぐとともに尿道内腔の再狭窄を予防する必要がある。そこで本研究では、防衛医科大学校倫理委員会の承認を受けた後、口腔粘膜組織を用いた尿道再建術の際に余剰となった組織から上皮前駆細胞を分離し、上皮前駆細胞の増殖に必要な因子の同定を行った。その結果、インスリンおよびInsulin-like Growth Factor-1(IGF-1)が上皮前駆細胞の増殖を促していることを見出した。 【外傷性尿道狭窄症ウサギの作製】 これまでに、外傷性尿道狭窄症のモデル実験動物は確立されていない。そこで本研究では、まず尿道狭窄症ウサギの作製を試みた。尿道内腔に刺創を複数個所作製し、尿道内腔の損傷と線維化・瘢痕化による狭窄を惹起し、外傷性尿道狭窄症ウサギを作製した。しかしながら、この方法ではウサギの手術に時間を要し、また、尿道狭窄の程度も実験動物によって個体差があり、適切な尿道狭窄症モデルとは言えなかった。そこで、尿道内腔を電気メスのボール電極にて凝固し、短時間で再現性が高い尿道粘膜傷害モデルを作製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では平成29年度に実施予定であった外傷性尿道狭窄症ウサギの作製を前倒しして平成28年度に実施し、動物実験モデルを確立した。この研究成果は、今後に尿道狭窄症の治療実験や尿道再建術の実験を行う上で飛躍的に研究スピードを上げることができる。 また、尿道再建に用いる細胞足場材料の決定も当初の計画通り順調に作製できている。さらに、上皮細胞の増殖にインスリンまたはInsulin-like Growth Factor-1(IGF-1)の添加が有効であったという研究成果は、これらの因子を用いた尿道狭窄症治療実験を行う上で非常に重要な研究成果である。 これらの理由から、当初の計画以上に本研究は進展してると言える。次年度も本研究成果を活用した研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、細胞足場材料の作製、上皮細胞の培養および外傷性尿道狭窄症モデルウサギの作製に成功した。特に、ウサギの尿道内腔を電気メスのボール電極にて凝固した尿道粘膜傷害による外傷性尿道狭窄症モデルウサギの作製に成功し、再現性の高い病態モデル動物を用意できたことで、次年度以降の研究が飛躍的に加速すると考えている。さらに、細胞足場材料としてコラーゲンが有用であることを明らかにし、上皮細胞の増殖にインスリンやInsulin-like Growth Factor-1(IGF-1)が重要な役割を果たしていることを見出していることから、次年度以降はコラーゲンを用いて作製した細胞足場材料にインスリンまたはIGF-1を含浸させ、尿道狭窄部位へ移植することによって、細胞移植に依存しない尿道再建を行っていく予定である。 平成29年度(研究期間2年目)に実施予定であった研究内容を前倒しで進めており、次年度以降も尿道狭窄症に対する低侵襲な治療法の開発に向けた研究を進める。
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