研究課題
癌の発生、浸潤や転移の過程において、癌細胞とその周囲の微小環境の相互作用が極めて重要な役割を担っている。本研究では、われわれが継続して行ってきたマクロファージならびに卵巣癌幹細胞に関する研究をさらに発展させることで、両細胞を中心として引き起こされる進行卵巣癌の腹腔内播種の分子メカニズム、そして腹腔内の微小環境ニッチの機能的役割を解明し、卵巣癌の完全治癒を目指す戦略の構築を目的としている。われわれは、過去30年以上にわたり女性生殖臓器におけるマクロファージが有する様々な生理的機能に関する研究を継続して行ってきた背景がある。その中で、マクロファージと卵巣癌に関する過去の研究では、卵巣癌の腹腔内微小環境の形成における腹腔マクロファージの存在を明らかにした。進行卵巣癌症例においては早期癌症例と比較して、腹水中のマクロファージ数が有意に増加していることが示され、加えてマクロファージの機能に関わるIL-6やIL-10などが著しく増加していることが見出された。また、卵巣癌組織中の腫瘍関連マクロファージ(TAM)がM2型マクロファージとして免疫抑制性の機能を有し、さらにCSF-1の発現が卵巣癌の組織学的悪性度に有意に相関することを明らかにした。今回われわれが行った研究から、卵巣癌の腹腔内の播種病巣に存在するTAMは、卵巣癌の転移ならびに卵巣癌幹細胞の幹細胞性の維持に関わり、癌幹細胞ニッチとして中心的な役割を果たしていることが示された。今後われわれは、腹腔マクロファージと卵巣癌幹細胞とのそれぞれの細胞間相互作用、そしてそれらに関わる分子シグナル伝達機構について網羅的な解析を行うことで、最終的には進行卵巣癌の腹腔内播種に至るプロセスから理論的に導かれた卵巣癌幹細胞ならびに癌幹細胞ニッチの両者を標的とする治療戦略である“Dual-targeted therapy”の開発を目指す。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (2件)
Oncogene
巻: 38 ページ: 2885-2898
10.1038/s41388-018-0637-x.
Cancer Science
巻: 109 ページ: 3403-3410
10.1111/cas.13775.
International Journal of Gynecological Pathology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1097/PGP.0000000000000527.
Gynecologic Oncology Reports
巻: 24 ページ: 61-64
10.1016/j.gore.2018.01.010.
International Journal of Gynecological Cancer
巻: 28 ページ: 539-544
10.1097/IGC.0000000000001196.