研究実績の概要 |
前年度に行ったin vivo LED 照射の条件設定の実験で得られた至適な条件に基づいて, 本年度は光応答性CRISPR/CAS9システムによる生殖能のin vivo制御を試みた.着床制御・責任因子として知られているLIFに着目し, LIFに対するguide RNA (gRNA)を作成し,ICRマウス交配確認後,2.5dpcにLIF-gRNAと光CAS9プラスミドを腹腔内投与し,3.5dpcにLEDを24時間照射した.7.5dpcで着床数を検討したところ, コントロールgRNA+LED照射では無処置群と同様の着床数が得られた一方, LIFgRNA+LED照射では着床数が有意に低下した (高尾, 他, 論文準備中).この光CAS9による生殖能のin vivo制御の成功を受けて, 抑制ではなく発現増強を目的とした光応答性CRISPR-dCas9システム(光dCAS9)を立ち上げて, in vitroにおいては目的の遺伝子発現をLED照射により増強させることに成功した.一方, 光応答性遺伝子改変子宮(幹)細胞を脱細胞骨格に搭載して子宮に移植することにより, 光応答性に子宮全体を制御する治療戦略の実現のために, in vivoでの実験を行ったが, 子宮細胞への遺伝子導入効率が低く細胞も十分に増殖しなかった.そこで搭載する候補細胞を無限増殖が可能なiPS細胞として検討した結果, iPS細胞を子宮内膜間質細胞へ分化誘導する方法を共同研究により世界に先駆けて確立した (Miyazaki, et al., 2018).さらに脱細胞子宮骨格の生体マテリアルとしての特性解析を行うなかで, その脱細胞骨格の構造極性が再生される子宮組織の構造に反映されることが判明し, 正しいオリエンテーションで脱細胞骨格を用いる必要性が示された (Miki, et al., 2019).
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