研究課題
マウス子宮内膜上皮細胞の性周期に伴うCD9の局在変化を検証したところ、発情期と発情間期では基底膜側にCD9が局在するのに対し、着床期では基底膜と対側の子宮内腔側に局在しており、性周期に応じたCD9の再配置が起こることが明らかとなった。さらに、着床期のCD9の局在と胚の着床部位は一致していた。着床期のヒト子宮内腔洗浄液については、気管吸引チューブを子宮腔に挿入し、生理食塩水5mlで洗浄、回収した。反復着床不全症例に対して、子宮内腔液を凍結保存するとともに、その後の臨床経過を追跡している。子宮内腔液の採取後、無治療で胚移植後に臨床妊娠に至った群、子宮内腔液の採取後に子宮鏡で慢性子宮内膜炎が疑われ、抗生剤・抗炎症薬が投与された群、さらにその中で、治療後に再び子宮内腔液が採取され胚移植後に臨床妊娠に至った群に分類した。顕微授精後に1個の受精卵を30-ul dropに入れ、5日間培養液は交換せずに胚盤胞期まで培養して形態良好胚盤胞が得られた場合に、使用済み培養液を回収し、胚それぞれについて凍結保存した(~25 ul)。胚を入れずに同様に培養したコントロール培養液も凍結保存した。RNA-seqによりmiRNA網羅的解析を行った結果、胚を入れた培養液では、胚を入れないコントロール培養液に比べて多数のmiRNAの濃度が有意に高かった。胚から放出されるmiRNAが多数存在すると考えられた。次に、その後移植され妊娠に至った胚が由来する培養液群(妊娠群)、妊娠に至らなかった胚の由来する培養液(非妊娠群)、胚を入れないコントロール培養液についてmiRNA網羅的解析を行い、各群で特異的に発現するmiRNAが抽出された。さらに、それらのmiRNAが胚の質的マーカー(妊娠予後マーカー)になりうるかを検討するため、サンプルをプールしないで、それぞれの胚の培養液(~25ul)中の miRNA発現量についてリアルタイムqPCRを用いて解析した。
3: やや遅れている
倫理委員会の承認、臨床サンプルの収集と保存方法の確定、さらに臨床経過を追跡しその後の妊娠の有無の検討などに時間を要したため。また、卵胞液の解析には、採卵から受精、胚培養まで一貫した単一受精卵培養系が必要であるが、当院培養室で立ち上げるためには医療安全の見地から十分な準備(新たな単一受精卵培養系の立ち上げ)が必要となったため。
着床期のヒト子宮内腔洗浄液については、以下の患者群に分類して検討する。子宮内腔液の採取後、無治療で胚移植後に臨床妊娠に至った群(正常子宮内腔液)、子宮内腔液の採取あるいは子宮鏡にて慢性子宮内膜炎が疑われ、抗生剤・抗炎症薬が投与された場合、治療後に再び子宮内腔液を採取し、その後に胚移植により臨床妊娠に至った群(治療前の異常子宮内腔液と治療後の正常化子宮内腔液)、子宮内腔液の採取後は無治療のまま2回以上良好胚を移植しても妊娠に至らなかった群(異常子宮内腔液)に分類した。今後これらを比較し、エクソソーム量、エクソソームに含まれるタンパク質プロファイルについて検討を進める予定である。ヒト胚盤胞から分泌されるmiRNAが胚のクォリティマーカーとなる可能性があり、胚の選択とそれに伴い着床率の向上に寄与する可能性がある。また胚盤胞由来エクソソームと子宮内膜由来エクソソームを包括的に研究することにより、胚側・子宮側着床因子の機能解明、さらには反復着床不全の治療法開発に繋げられる可能性がある。
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