研究課題/領域番号 |
16H05478
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川瀬 哲明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (50169728)
|
研究分担者 |
菅野 彰剛 東北大学, 医学系研究科, 講師 (20578968)
小渕 千絵 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (30348099)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 聴覚情報処理障害 / 注意障害 / 聴覚情景分析 / 脳磁図 |
研究実績の概要 |
聴覚情報処理障害(auditory processing disorders: 以下APD)は、聴力検査では大きな異常を認めないにも関わらず、「聞き返しが多い」「特に雑音下で聞き取りにくい」「聴覚のみでの学習は不得意」など日常的な聞き取り障害を呈する病態であるが、その聞き取り困難の客観的な評価が課題となっている。 本年度は、聴覚情報処理障害の病態解明と病態に基づく他覚的診断法の確立を目的に以下の研究を行った。 1)スピーカーアレイを用いた競合音声存在下単語了解度検査の確立:昨年度実施した予備的検討をもとに、防音無響室内に設置されたスピーカーアレイシステムを用いて、競合音声存在下の聴き取り、並びに、あらかじめ聴き取る音声の方向が提示された場合の影響、効果について、正常人、並びに聴覚情報処理障害患者を対象に本格的な検討を行った。その結果、通常の聴覚機能検査では検出できなかった、聴覚情報処理障害患者の聴き取り障害の程度評価や病態の分類に有用であることが明らかになった。 2)APD診断のためのヘッドフォン下での競合音声存在下の聞き取り検査の確立:本年度は、1)のスピーカーアレイを用いた検査と同質の検査をヘッドフォン下で実現し、実際にAPD患者での検討を行った。その結果、スピーカー法に比べて聞き取り困難の異常の発見率が低い傾向が示されるなど、ヘッドフォン検査での課題も確認された。 3)脳磁図を用いた聴覚情報処理機能評価:上記のAPD患者を対象とした心理音響学的検討などから、APD患者における聴覚的注意メカニズムの不全が示唆されたため、聴覚的注意の特性を評価する視点からの脳磁図計測法について、予備的な検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 当初の研究計画通り、聴覚情報処理障害評価の為の神経生理学的、心理音響学的評価法を確立し、特に、心理音響学的評価については 、聴覚情報処理障害患者での検討を順調に進めることができ、論文発表の準備も進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度として以下の研究を実施し、研究全体の総括を行う予定。 1)スピーカーアレイを用いた競合音声存在下単語了解度検査:本年度実施したAPD患者を対象とした同検査について、さらに症例を重ね、APDの病態診断における有用性について総括する。 2)APD診断のためのヘッドフォン下での競合音声存在下の聞き取り検査の確立:本音度、1)のスピーカーアレイを用いた検査と同質の検査をヘッドフォン下で実現し、実際にAPD患者での検討を行ったが、ヘッドフォン検査での課題も確認された。来年度は、この課題を解決すべく、新たな視点で検査の改良を実施し、APD診断のためのヘッドフォン下の聞き取り検査を確立する。 3)脳磁図を用いた聴覚情報処理機能評価:上記のAPD患者を対象とした心理音響学的検討などから、APD患者における聴覚的注意メカニズムの不全が示唆されたため、来年度は聴覚的注意の特性を評価する視点からの脳磁図計測をさらに進め、脳磁図を用いたAPD患者の注意機能に関する他覚的評価法の確立を行う。
|