研究課題/領域番号 |
16H05479
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
欠畑 誠治 山形大学, 医学部, 教授 (90261619)
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研究分担者 |
伊藤 吏 山形大学, 医学部, 准教授 (50344809)
渡辺 知緒 山形大学, 医学部, 講師 (60344793) [辞退]
古川 孝俊 山形大学, 医学部, 助教 (80466630)
窪田 俊憲 山形大学, 医学部, 助教 (80536954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内耳 / 再生 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では多能性幹細胞であるMuse細胞を用い、障害された内耳の幹細胞移植による機能再生の可能性を検討している。蝸牛内に生着したMuse細胞がその特異的微小環境によって内耳細胞系譜へと分化していく内耳再生機構と、Muse細胞のtrophic factorにより内耳有毛細胞やシナプスが自己修復することによる内耳再生機構を、機能的・形態学的・免疫組織学的にモルモット内耳障害モデルとマウス内耳3次元器官培養を用いて多面的に解析している。Muse細胞はリポフェクションによりGFPを導入したヒトMSCから、FACSを用いてSSEA-3陽性細胞として単離した。 Muse細胞を作用させる障害モデルとして、本研究ではin vivoとin vitroでの環境の準備に取り掛かった。まずin vivoでは音響外傷によるモルモットの内耳障害モデルを採用することとした。これはMuse細胞の移植操作がマウスなどよりも比較的容易であり、障害モデル作製についての報告も散見されるためである。今年度はモルモットを用いた音響障害モデルの作製を行った。またin vitroではマウスより単離した蝸牛組織の器官培養系を用いることとし、障害のためゲンタマイシンを作用させることとした。これも障害モデルの作製についての報告が散見されるためである。 今年度はまず、in vivoでの条件としてモルモットを用いた音響障害モデルの作製を行っている。現在のところ障害を起こすことはできているが、障害の程度が強すぎる可能性があり。障害の程度の調整を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4週齢のモルモットに全身麻酔下に136dBの超強大音を2時間暴露させた。音響暴露翌日のABRでは聴力がscale outとなり、2週間後には高度難聴程度まで改善するが、それ以降は改善を認めなかった。また組織学的にも正常蝸牛有毛細胞に比べ、ほとんどの外有毛細胞が脱落していることを確認した。これらの結果をもとに音響暴露2週間後の聴力と回転毎での内・外有毛細胞の脱落率を計測し、幹細胞移植後の評価のためのコクレオグラムを作成した。音響障害モデルのモルモットに対し、音響暴露翌日に左耳に10,000または30,000のMuse細胞を移植し、右耳にはPBSのみを注入した。Muse細胞移植群では蝸牛内でのGFP陽性Muse細胞はほとんど確認できず、聴力の改善傾向も見られなかった。原因として内耳障害の程度が強すぎると考えたため、4-8kHz,130dB-3時間、4-8kHz,125dB-3時間の暴露でモデルを再検討している。
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今後の研究の推進方策 |
Muse細胞を作用させるため、vivoでの音響外傷モデルの作製およびvitroでの薬剤障害蝸牛培養モデルの作製を行う。Muse細胞は障害を受けた細胞と同等の状態に分化し、組織を修復することが想定されているが、組織の障害強すぎると分化するべき細胞が残っておらず、Muse細胞への分化誘導が十分になされない可能性が考えらる。このため、障害の程度の調整がMuse細胞の分化能を検討するために必要条件と考えられる。引き続き障害モデルの条件検討を行う予定である。
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