研究実績の概要 |
今年度には中咽頭癌・上咽頭癌組織における性ホルモン受容体と内因性免疫の免疫組織学的解析を行った。パイロットスタディの通り、HPV陽性中咽頭癌ではエストロゲン受容体の発現が強い傾向があった。またEBV陰性の上咽頭癌ではエストロゲン受容体が強く発現する傾向があった。他のアンドロゲン受容体やプロゲステロン受容体は他の癌腫との相違もあるが有意な結果は認めなかった。 また、内因性免疫因子の発現を免疫組織化学的に解析を行った。上咽頭癌においても中咽頭癌においてもAPOBEC3A. APOBEC3G, AIDの発現がウィルス陽性であると強い傾向があることが判明した。その反面、APOBEC1, 4, APOBEC3B, DE, F, Hは有意な結果は認めなかった。また、HPV陽性の中咽頭癌ではエストロゲン受容体が高いサンプルではAPOBEC3Aの発現が高い傾向にあることがわかった。更に予後解析を行うとHPV陽性中咽頭癌の中でもエストロゲン受容体が高い傾向にあることが判明した。このことからHPV陽性中咽頭癌の発癌あるいは転移機構にはエストロゲン受容体を介したシグナル伝達機構が重要であることが示唆された。これまで子宮頚がんでは発癌する上で、HPVのがん遺伝子であるE6, E7に加え、エストロゲン受容体とエストロゲンの刺激が必要であり、エストロゲン受容体をノックアウトすると子宮頚がんが発生しなくなることがわかっている。このことから中咽頭がんにおいてもこれらの要素が重要であることが示唆された。
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