研究課題
内因性免疫とは、宿主へのウイルス感染に対して細胞自身が有する原始的免疫防御機構である。近年、「内因性免疫」はウイルス遺伝子のみならず宿主遺伝子にも変異を導入し発癌を促進する事が判明した。本研究では、このユニークな性質を持つ「内因性免疫」に着目し、1)ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)による中咽頭癌発癌とEpstein-Barrウイルス(EBV)による上咽頭癌発癌を対比し解析する事で「内因性免疫」による頭頸部ウイルス発癌機構を解明すること、2)「内因性免疫」のregulatorであるエストロゲンとエストロゲン類似物質である内分泌撹乱物質による「内因性免疫」発現調節機構について解析し、ウイルス発癌に特異的な治療法を開発することを目的とする。平成29年度までに、中咽頭癌・上咽頭癌組織における性ホルモン受容体と内因性免疫の免疫組織学的解析およびmRNA発現解析を行った。パイロットスタディの通り、HPV陽性中咽頭癌ではエストロゲン受容体の発現が強い傾向があった。またEBV陰性の上咽頭癌ではエストロゲン受容体が強く発現する傾向があった。また、内因性免疫因子の発現を免疫組織化学的に解析を行った。上咽頭癌においても中咽頭癌においてもAPOBEC3A. APOBEC3G, AIDの発現がウィルス陽性であると強い傾向があることはわかった。また、宿主遺伝子、ウィルス遺伝子中の遺伝子変異量を3D-PCRおよびシークエンスにて解析を行ったが、いくつかの宿主遺伝子およびHPV遺伝子のE2領域、EBV遺伝子のLMP1領域で内因性免疫に特異的な遺伝子変異が検出された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、免疫染色、リアルタイムPCRによる臨床検体および細胞株の解析が順調終わっており、有意なデータも確認できたため。
平成30年度は、さらに平成29年度までに検討された宿主遺伝子およびウィルス遺伝子の変異解析を継続する。またEBV陽性・陰性上咽頭癌細胞株、HPV陽性・陰性中咽頭癌細胞株に、エストロゲンおよびエストロゲン擬似物質を投与しこれらの宿主遺伝子ならびにウィルス遺伝子に変異が増加するか検討する。また同時に内因性免疫因子の発現が変化するかも検討を行う。
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Scientific reports
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