研究課題
難聴の原因は、内耳有毛細胞の損傷・消失とされている。本研究計画では、多能性幹細胞を用いて有毛細胞を創生し、内耳疾患治療の基礎的研究を目的とした。本年度(令和元年度)は、分化誘導メカニズムの解明と細胞移植におけるホスト(マウス)組織・細胞との相互作用解析を中心に、以下の項目を実施した。まず、前年度(平成30年度)までに行った多能性幹細胞(ES細胞)から有毛細胞への分化誘導法を発展させ、分化誘導因子の特定を図った。最初に、内耳由来細胞(蝸牛、前庭由来)の培養上清を用いた方法により有毛細胞特異的発現を誘導し、蝸牛有毛細胞(C-HC)あるいは前庭有毛細胞(V-HC)へ特異的に分化誘導可能な方法を開発した。次に、内耳由来細胞を用いることでC-HCあるいはV-HCへの分化を制御可能とする因子を特定するため、蝸牛、前庭由来の細胞を単離し、RNA-seqによる分泌系タンパク質の発現に着目し、遺伝子解析を行った。その結果、蝸牛・前庭由来細胞で優位に高発現する因子を、それぞれ20種程度特定するに至り(UniProtデータバンクで登録されているタンパク質に限定)、その結果、これらの因子による分化誘導制御の可能性が示唆された。また、マウス内耳由来単離蝸牛を用いた培養実験と、その詳細な解析を行った。ES細胞から分化誘導させたC-HCを単離蝸牛と共に培養した結果、細胞の生着や蝸牛組織とのコンタクト(聴神経細胞などと)を認めた。カナマイシン処理した単離蝸牛との共培養では、生着細胞数の増加を認めたため、損傷蝸牛における細胞移植では生着率を亢進させることが明らかとなった。現在、生着したC-HCの構造学的、機能的解析を行っており、V-HCを用いた前庭系への培養実験、および難聴モデルマウスへの移植実験も同時に進めているところである。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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