研究課題
生活習慣病や加齢に伴って発症・進行する網膜疾患(加齢黄斑変性や糖尿病網膜症など)や心・腎臓疾患(糖尿病性腎症など)は、高齢化社会の我が国においては重要な問題である。これらの疾患は生活習慣病に合併した血管症であり、病理的血管新生により組織傷害が起こる。このため、血管新生の前駆段階である炎症病態に早期介入する治療戦略の確立は、喫緊の社会的急務である。これまでに我々は、受容体結合プロレニン系(RAPS)が網脈絡膜疾患の分子病態を制御し、生活習慣病における臓器障害に関与することを報告してきた。RAPSは、は眼組織のみならず腎臓や心臓などの病態モデルにおいても認められ、(プロ)レニン受容体を中心としたRAPSは生活習慣病における臓器保護のための共通の創薬ターゲットとして注目されている。また、最近、我々は臨床検体を用いた解析の結果、慢性炎症・血管新生が背景に存在する糖尿病網膜症などの病態形成においてRAPSが重要であることを示した。そこで、本研究ではRAPSに対する特異的機能阻害薬を核酸有機化学を応用した核酸医薬、および配座制御に基づく医薬分子設計法の技術を駆使して開発し、複数の創薬を視野に入れた基盤研究を展開する。さらに網脈絡膜疾患動物モデルを用い、新規RAPS阻害剤により慢性炎症病態を抑制する治療戦略の確立を目指す。また、それにあわせ硝子体注射に代わりうる後眼部薬物送達システム[科研費 基盤(B) 24390392にて一部開発中]を利用した前臨床試験を行う。
2: おおむね順調に進展している
ヒト・マウス共通の(プロ)レニン受容体遺伝子配列を標的とした一本鎖RNA干渉をデザインした。得られた一本鎖RNA干渉は、代表的な二本鎖siRNAと同等の遺伝子発現抑制効果を示したが、生物学的安定性の向上が認められた。さらに正常マウスに一本鎖RNA干渉を硝子体投与したが、組織学的・電気生理学的な変化は認められなかった。また、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルマウスに投与したところ、網膜において惹起された炎症関連分子(単球走化性因子-1やインターロイキン-6など)の遺伝子発現の抑制が認められた。
昨年度作製した一本鎖RNA干渉をレーザー誘導脈絡膜血管新生モデルなどの異なるモデル動物に投与して、疾患の適応拡大を目指す。さらに安全性の確認や一本鎖RNA干渉に修飾を行いドラッグデリバリーシステムの開発などを行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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