研究課題/領域番号 |
16H05484
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石田 晋 北海道大学, 医学研究院, 教授 (10245558)
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研究分担者 |
周東 智 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (70241346)
神田 敦宏 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (80342707)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 受容体結合プロレニン系 / (プロ)レニン受容体 / レニン・アンジオテンシン系 / 血管新生 / 網脈絡膜疾患 |
研究実績の概要 |
生活習慣病や加齢に伴って発症・進行する網膜疾患(加齢黄斑変性や糖尿病網膜症など)や心・腎臓疾患(糖尿病性腎症など)は、高齢化社会の我が国においては重要な問題である。これらの疾患は生活習慣病に合併した血管症であり、病理的血管新生により組織傷害が起こる。このため、血管新生の前駆段階である炎症病態に早期介入する治療戦略の確立は、喫緊の社会的急務である。これまでに我々は、受容体結合プロレニン系(RAPS)が網脈絡膜疾患の分子病態を制御し、生活習慣病における臓器障害に関与することを報告してきた。RAPSは、眼組織のみならず腎臓や心臓などの病態モデルにおいても認められ、(プロ)レニン受容体を中心としたRAPSは生活習慣病における臓器保護のための共通の創薬ターゲットとして注目されている。また、最近、我々は臨床検体を用いた解析の結果、慢性炎症・血管新生が背景に存在する糖尿病網膜症などの病態形成においてRAPSが重要であることを示した。 そこで、本研究ではRAPSに対する特異的機能阻害薬を核酸有機化学を応用した核酸医薬、および配座制御に基づく医薬分子設計法の技術を駆使して開発し、複数の創薬を視野に入れた基盤研究を展開する。さらに網脈絡膜疾患動物モデルを用い、新規RAPS阻害剤により慢性炎症病態を抑制する治療戦略の確立を目指す。また、それにあわせ硝子体注射に代わりうる後眼部薬物送達システム[科研費 基盤(B) 24390392にて一部開発中]を利用した前臨床試験を行う
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA干渉と核酸有機化学の技術を駆使して新規に開発した(プロ)レニン受容体に対する特異的機能阻害薬[(P)RR-PshRNA]を、レーザー誘導脈絡膜血管新生モデルマウスに投与して、real-time PCR法、イムノブロット法や免疫組織染色法などで解析し、その病態抑制効果を検討した。 結果、(P)RR-PshRNA投与により脈絡膜血管新生の形成や脈絡膜組織における炎症関連分子(単球走化性因子-1やインターロイキン-6など)の遺伝子発現の抑制が認められた。 疾患モデル動物において(P)RR-PshRNAにより眼病態の抑制効果が認められたことより、今後、加齢黄斑変性などに対する新たな分子標的療法となると示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
現在、加齢黄斑変性における血管新生では、それに伴う線維化つまり瘢痕化が重要な問題となっている。今後、(P)RR-PshRNAを用いた線維化への病態抑制効果を検討する。
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